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特殊詐欺の被害額が8月末で2,360億円、最大の手口はSNS型投資詐欺の937億円|累計は33%増でも、8月単月は前年同月を下回った

特殊詐欺の被害額が8月末で2,360億円、最大の手口はSNS型投資詐欺の937億円、8月単月は前年同月を下回った、という文字が入ったアイキャッチ。暗い背景の前で、眼鏡をかけた年配の男性が難しい表情でスマートフォンを耳に当てて通話している写真

警察庁が2026年10月2日、「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」を公表しました。2026年1月から8月までの認知件数は29,687件、被害額は2,360.7億円で、前年の同じ時期より件数が3,732件(14.4%)、被害額が588.4億円(33.2%)増えています。

手口別で被害額が最も大きいのはSNS型投資詐欺の937.4億円です。ただし発表資料の数字を月ごとに並べ直すと、「増え続けている」という見出しとは少し違う形が見えてきます。この記事では、公表された数字そのものと、そこから読み取れることを分けて整理します。

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発表されたのは「1〜8月の累計」の暫定値

まず数字の性質を確認します。今回公表されたのは2026年1月1日から8月31日までを足し上げた累計で、しかも暫定値です。確定値ではないので、あとから動く可能性があります。

項目令和8年8月末前年同期比
認知件数29,687件+3,732件(+14.4%)
被害額2,360.7億円+588.4億円(+33.2%)
検挙件数5,443件+1,095件(+25.2%)
検挙人員1,949人+409人(+26.6%)

243日分なので、1日あたりに割り戻すと約122件・約9.7億円です。1時間あたりにすると約5件になります。被害に気づいていない人や届け出ていない人はこの数字に入らないため、実際に起きている件数はこれより多いと考えるのが自然です。

検挙も増えていて、件数が25.2%、人員が26.6%の増加です。特にSNS型投資詐欺は検挙件数648件(+390.9%)、検挙人員286人(+393.1%)で、前年同期の約5倍になりました。

特殊詐欺の被害額2,360.7億円を手口別の横棒グラフで示した図。2026年1〜8月の累計で、SNS型投資詐欺937.4億円(前年同期比プラス53.8%、1件あたり約1,321万円)、ニセ警察詐欺728.6億円(プラス27.0%、約1,148万円)、SNS型ロマンス詐欺325.8億円(プラス0.8%、約929万円)、オレオレ詐欺104.2億円(プラス19.3%、約380万円)、架空料金請求詐欺97.5億円(プラス16.0%、約232万円)、還付金詐欺46.5億円(プラス7.2%、約226万円)、金融商品詐欺28.4億円(プラス117.9%、約993万円)、その他の手口6種92.3億円。下に、上位2手口で被害額全体の70.6%を占めること、前年同期の内訳を前年同期比から逆算するとSNS型投資詐欺609.4億円・ニセ警察詐欺573.5億円で前年も首位はSNS型投資詐欺だったこと、変わったのは順位ではなく2位との差が35.9億円から208.8億円へ開いたことを記している
警察庁「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年10月2日公表)から作成。1件あたりの被害額は認知件数と被害額から算出した

最大の手口はSNS型投資詐欺。ただし「初めて」ではない

手口別の内訳は次のとおりです。被害額の大きい順に並べました。

手口認知件数前年同期比被害額前年同期比
SNS型投資詐欺7,097件+49.4%937.4億円+53.8%
ニセ警察詐欺6,346件-4.1%728.6億円+27.0%
SNS型ロマンス詐欺3,506件+0.4%325.8億円+0.8%
オレオレ詐欺2,739件+20.9%104.2億円+19.3%
架空料金請求詐欺4,211件+13.6%97.5億円+16.0%
還付金詐欺2,058件-10.0%46.5億円+7.2%
金融商品詐欺286件+164.8%28.4億円+117.9%
キャッシュカード詐欺盗1,019件+32.7%10.8億円+18.7%
預貯金詐欺667件-43.2%6.0億円-53.3%

SNS型投資詐欺とニセ警察詐欺の2つで、被害額全体の70.6%を占めます。

ここで一点、報道で見かける「SNS型投資詐欺が初めて最大の手口になった」という説明には注意が必要です。発表資料には前年同期比の差異(+328.0億円)が載っているので、そこから引き算すると前年同期のSNS型投資詐欺は609.4億円だったことになります。同じ計算でニセ警察詐欺は573.5億円です。つまり前年の同じ時期にもSNS型投資詐欺が最大でした。

変わったのは差の大きさです。前年同期は35.9億円しか離れていませんでしたが、今年は208.8億円の差になりました。「首位が入れ替わった」ではなく「首位が引き離した」が、この8か月で起きたことです。

累計は33%増でも、8月単月は前年同月を下回っている

発表資料には2025年1月からの月別の推移グラフも載っています。その数値を月ごとに前年同月と比べると、増え方が年初から一貫して鈍っていることが分かります。

月2025年2026年前年同月比
1月156.8億円317.0億円+102.2%
2月172.4億円276.7億円+60.5%
3月201.5億円344.2億円+70.8%
4月211.4億円322.0億円+52.3%
5月225.4億円254.8億円+13.0%
6月230.1億円301.5億円+31.0%
7月277.8億円291.9億円+5.1%
8月297.0億円252.6億円-14.9%

1月は前年の2倍を超えていたのに、7月は+5.1%まで縮み、8月は前年同月を下回りました。8月の252.6億円は、2026年に入ってから2月(276.7億円)に次いで低い水準です。認知件数も同じ傾向で、1月の+37.7%から8月は+0.6%まで縮んでいます。

累計で+33.2%という数字は、増え方が大きかった年の前半を含んでいるために出てくる数字です。累計と直近の月は別のことを言っていて、どちらも正しい、という読み方になります。

ただし、これを「もう収まってきた」と受け取るのは早いと考えます。理由は3つあります。1つ目は暫定値なので動く余地があること。2つ目は月別の被害額はもともと上下が大きく、1か月の下振れで傾向を決められないこと。3つ目は、前年のピークが12月の477.3億円だったことです。年末に向けて跳ねた前例があるので、これから数か月の数字を見ないと判断できません。

特殊詐欺の被害額の月別推移を2025年と2026年で並べた棒グラフ。単位は億円で、1月156.8対317.0(前年同月比プラス102.2%)、2月172.4対276.7(プラス60.5%)、3月201.5対344.2(プラス70.8%)、4月211.4対322.0(プラス52.3%)、5月225.4対254.8(プラス13.0%)、6月230.1対301.5(プラス31.0%)、7月277.8対291.9(プラス5.1%)、8月297.0対252.6(マイナス14.9%で前年同月を下回る)。下に、1月は前年の2倍超だった増え方が7月はプラス5.1%まで縮み8月は前年同月を14.9%下回ったこと、それでも8か月の累計では前年同期比プラス33.2%であること、前年のピークは12月の477.3億円で年末に跳ねた前例があるため1か月の下振れで傾向は決められないことを記している
同資料の月別推移グラフの数値から作成。累計の前年同期比プラス33.2%は、増え方が大きかった年の前半を含んだ数字になっている

件数が減っても被害額が増える手口がある

もう一つ気になるのがニセ警察詐欺です。認知件数は6,346件で前年同期より4.1%減っているのに、被害額は728.6億円で27.0%増えています。件数が減って金額が増えたということは、1件あたりの被害が大きくなったということです。

件数と被害額から1件あたりを計算すると、手口によってかなり差があります。

手口1件あたりの被害額
SNS型投資詐欺約1,321万円
ニセ警察詐欺約1,148万円
金融商品詐欺約993万円
SNS型ロマンス詐欺約929万円
特殊詐欺全体約795万円
オレオレ詐欺約380万円
架空料金請求詐欺約232万円
還付金詐欺約226万円
キャッシュカード詐欺盗約106万円

上位4つに共通しているのは、どれも短時間では完結しない手口だということです。SNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺は、SNSのダイレクトメッセージやマッチングアプリで知り合ってから何週間もやりとりを重ね、信頼ができたところで送金に進みます。ニセ警察詐欺も、警察官を名乗る相手と通話を続けながら話が進んでいきます。

逆に、架空料金請求詐欺や還付金詐欺は1件あたりが200万円台です。1回きりの接触で終わる手口のほうが、金額は小さくなっています。時間をかけて関係をつくる手口ほど、動く金額が大きいという形になっています。

去年までのニュースの数字と、そのまま比べられない

もう一つ、数字を読むときの前提があります。警察庁は令和8年(2026年)から、特殊詐欺の手口の整理のしかたを変えました。発表資料にはこう書かれています。

被害の全体像や近年急増しているニセ警察詐欺の現状と対策をより分かりやすくするため、警察庁においては令和8年から下記のとおり整理し、全体を「特殊詐欺」と呼称することにしました。

被害が急増している「ニセ警察詐欺」を独立した手口として位置付けました。

SNS型投資・ロマンス詐欺を特殊詐欺の一手口として位置付けました。

つまり、2025年までは別に数えられていたSNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺が、2026年から特殊詐欺の中に入りました。この2つで今年は1,263.2億円あるので、枠の広さがまったく違います。

今回の前年同期比については、前年の数字も新しい枠で計算し直されているので、+33.2%という比較自体は同じ枠同士のものです。資料の月別グラフも2025年1月からSNS型投資詐欺の線が引かれています。

注意が必要なのは水準のほうです。2025年以前のニュースで見た「特殊詐欺の被害額」はSNS型投資・ロマンス詐欺を含まない数字なので、その記憶と2,360.7億円を並べると、実際以上に急増したように見えます。比べるときは、どちらも新しい枠の数字かどうかを確かめてください。

なお、ニセ警察詐欺の検挙件数・検挙人員には前年同期比が載っていません(表では「―」)。この手口として数えはじめたのが令和8年からで、前年は他の手口に含まれていたためです。認知件数と被害額には前年同期比があります。

窓辺に置かれた画面が真っ黒なスマートフォンに、片手を伸ばして取ろうとしているところを真上から写した写真。画面には文字もアプリのアイコンも表示されていない
折り返す前に、その番号が本物かどうかを自分で調べた連絡先で確かめる。迷った段階で使える窓口が#9110と188にある(写真はイメージ)

今日できること

数字の話はここまでです。この発表から自分の側でできることを整理します。

接触してくる経路を知っておく。 被害額の上位3手口のうち2つはSNS起点です。SNSのダイレクトメッセージ、マッチングアプリ、そこから移動した先のメッセージアプリが入り口になります。投資の話を持ちかけられたときに警察庁が挙げている考え方は「投資に『絶対』『確実』はない」です。元本保証や確実な利回りをうたう相手は、その一点で外していいことになります。

警察庁推奨アプリを入れておく。 警察庁は2026年から、特殊詐欺対策に有効と認めたアプリを「警察庁推奨アプリ」として紹介しています。現在挙がっているのは、NTTタウンページの「詐欺対策 by NTTタウンページ」とトレンドマイクロの「詐欺バスター Lite」の2つで、どちらも無料です。詐欺に使われた可能性の高い番号や国際電話の着信に警告を出したり、自動で遮断したりできます。累計ダウンロード数は8月末時点で約221万4,500件と公表されています。ニセ警察詐欺とオレオレ詐欺は電話から入るので、電話を受ける前の段階で止められる手段になります。

相談先を先に調べておく。 迷った時点で相談できる窓口が2つあります。警察相談専用電話の #9110 と、消費者ホットラインの 188 です。被害に遭ってからでなく、「これは詐欺だろうか」という段階で使える番号です。自分の家族がかけられるように、見えるところに書いておくほうが実用的です。

折り返さない。 警察官、銀行員、役所の職員を名乗る電話がかかってきたとき、その電話番号に折り返して確認しても意味がありません。相手が指定した番号にかけ直す形になるためです。確認したいときは、自分で調べた公式の番号にかけてください。

よくある質問

被害額2,360億円というのは、2026年の1年分ですか。

いいえ、2026年1月1日から8月31日までの8か月分の累計です。しかも暫定値なので、確定値はあとから変わる可能性があります。年間の数字ではありません。

8月は前年同月を下回ったのだから、詐欺は減っているのですか。

その1か月だけを見ればそうですが、減少傾向と言うには材料が足りません。月別の被害額はもともと振れ幅が大きく、前年は12月に477.3億円まで跳ねています。8か月の累計では前年同期を33.2%上回っています。

SNS型投資詐欺が初めて最大の手口になったと聞きました。

発表資料の前年同期比から逆算すると、前年の同じ時期もSNS型投資詐欺が最大(609.4億円)でした。今年変わったのは、2位のニセ警察詐欺との差が35.9億円から208.8億円に広がったことです。

ニセ警察詐欺は件数が減っているのに、なぜ被害額が増えたのですか。

1件あたりの金額が大きくなっているためです。認知件数は4.1%減、被害額は27.0%増で、1件あたりは約1,148万円になります。件数の減少を安心材料として受け取れる状況ではありません。

警察庁推奨アプリは有料ですか。

どちらも無料です。2026年10月9日時点で挙がっているのは「詐欺対策 by NTTタウンページ」と「詐欺バスター Lite」の2つで、警察庁のページからダウンロード先を確認できます。警察庁が提供する防犯情報の受信もできます。

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出典

月別の前年同月比、1件あたりの被害額、前年同期の手口別被害額は、発表資料に記載された月別数値および前年同期比の差異から算出したものです。

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