〜暮らしの落書き帳〜

パスキーは保存先しだいで、PCを買い替えると使えなくなる

ノートパソコンと外付けキーボードが並んだデスクで作業する手元

要点

  • パスキーは「どこに保存したか」で、新しいパソコンで使えるかどうかが決まる
  • Windows Hello(「このWindowsデバイス」)に保存したものは、新しいパソコンへ移せない。書き出して持っていく手段は用意されていない
  • GoogleパスワードマネージャーやiCloudキーチェーンなど、同期される保存先に保存したものは、同じアカウントでログインすれば使える
  • 買い替え前にやることは2つ。「設定 → アカウント → パスキー」で一覧を確認することと、パスキー以外のログイン手段が残っているかを確かめること
  • 移せなかった場合も、別のログイン手段でログインできれば新しいパソコンで作り直せる

パスワードを入力せず、指紋・顔・PINだけでログインできる「パスキー」に対応するサービスが増えました。ネット銀行や通販サイトのログイン画面で「パスキーを設定しますか」と表示され、案内どおりに設定した人も多いと思います。

ところがパスキーには、パスワードとは決定的に違う性質があります。パスワードは覚えてさえいればどのパソコンでも入力できますが、パスキーは「どこに保存したか」によって、新しいパソコンで使えるかどうかが変わります。

とくにWindowsの案内に従って「このWindowsデバイス」に保存した場合、そのパスキーは今のパソコンの中にだけあります。パソコンを買い替えても、自動ではついてきません。

ブックマークやメールの移行は買い替えの準備リストに入っていても、パスキーは見落とされがちです。この記事では、保存先ごとに何が変わるのか、買い替える前に何を確認しておけばよいのかを整理します。

パスキーは「パソコンの中」に入っていることがある

窓際の木製デスクに置かれた開いたノートパソコン

パスキーは、FIDOという業界標準にもとづく仕組みです。サービスに登録するとき、手元のデバイスで鍵のペアを作り、秘密鍵はそのデバイスに保存し、公開鍵だけをサービス側に登録します。ログインのときは、デバイスが秘密鍵で署名して「秘密鍵を持っている」ことを証明します。

秘密鍵がサービス側へ渡らないので、サービス側から流出しようがありません。Microsoftの解説でも、パスキーは各サイト・各アプリに固有で使い回せず、攻撃者が利用者をだまして秘密鍵を出させようとするフィッシングに強い、と説明されています。

ただし、この「デバイスに保存する」という性質が、そのまま買い替え時の悩みになります。秘密鍵が入っているデバイスが手元からなくなれば、そのパスキーは使えません。

Windowsの場合、秘密鍵はWindows Helloのロック解除要素(生体認証またはPIN)でロックを解除したあとにだけ使える形で保存されます。つまりパスキーは「そのパソコンと、そのPIN・指紋」に結びついています。パソコンを替えれば、その結びつきはなくなります。

なお、Windows 11 バージョン22H2(KB5030310を含む)以降では、パスキーを管理するための画面がWindowsに用意されています。後半で使う設定画面はこれにあたります。

保存先は4種類あり、引き継げるかどうかが分かれる

Microsoftの案内では、パスキーを作るときの保存先として次の4つが挙げられています。パソコンを買い替えたときにどうなるかは、この選択でほぼ決まります。

保存先実際に保存される場所パソコンを買い替えたときの扱い
同期される資格情報マネージャーGoogleパスワードマネージャー、Apple iCloudキーチェーンなど同じアカウントでログインすれば新しいパソコンでも使える
iPhone・iPad・Androidデバイス手元のスマートフォンやタブレットそのスマホが手元にあれば、スマホ側で承認してログインできる
セキュリティキーUSBなどの物理キーキーを持っていれば使える。ただしバックアップはされない
Windowsデバイス(Windows Hello)今使っているパソコンの中新しいパソコンには引き継がれない

Chromeのヘルプにも、パソコンでの保存先ごとの違いが書かれています。Googleパスワードマネージャーに保存したパスキーは、同じGoogleアカウントでログインしている複数のデバイス間で同期され、Windows 10以降・ChromeOS 129以降・Mac・Linuxで使えるとされています。

一方、同じChromeでも保存先をWindows Helloにした場合は、そのパソコンへのローカル保存だけで、同期もバックアップもされず、OSを再インストールすると復元できないと明記されています。セキュリティキーについても「バックアップされない」と書かれており、紛失したら復元できません。

Appleの環境も考え方は同じで、iCloudキーチェーンをオンにしておくと、承認済みのすべてのデバイスでパスキーやパスワードが自動入力されるようになります。

整理すると、「パスキーは移せない」のではありません。同期される場所に置いたか、パソコンの中に置いたかで結果が変わる、というのが正確なところです。設定するときの一瞬の選択が、数年後の買い替えのときに効いてきます。

Windows Helloに保存したパスキーは新しいパソコンへ移せない

木目の机に置かれたノートパソコンとカメラとコーヒーカップ

ここが、ブックマークやメールの移行といちばん違う点です。ブックマークならHTMLファイルに書き出して新しいパソコンに読み込ませることができますが、パスキーには、それに相当する「書き出して持っていく」手段が用意されていません。秘密鍵を取り出せないようにしてあるからこそ安全、という設計だからです。

そのため、新しいパソコンで同じサービスにパスキーを使いたい場合は、移行ではなく登録のやり直しになります。新しいパソコンで一度そのサービスにログインし、あらためてパスキーを作る、という手順です。

ということは、鍵になるのは「新しいパソコンで最初にログインする手段が残っているか」です。ここが抜けていると、買い替えた直後にログインの入口で止まります。古いパソコンがまだ動くうちに確認しておきたいのは、まさにこの点です。

スマホで承認する方法は「コピー」ではない

パソコンの画面に出たQRコードをスマホで読み取ってログインする方法を見たことがあるかもしれません。これはクロスデバイス認証と呼ばれるもので、Microsoftの解説では、パソコンとスマホの両方でBluetoothを有効にしてインターネットに接続する必要があり、パスキー自体を転送またはコピーすることなく別のデバイスを安全に承認する仕組みだと説明されています。

つまり、スマホに保存してあるパスキーで新しいパソコンのログインを通すことはできますが、それによって新しいパソコンの中にパスキーが増えるわけではありません。毎回スマホが必要になる、と考えておくと実態に近くなります。

買い替える前に確認しておきたい3つのこと

① どこに保存されているかを一覧で確認する

Windowsに保存されているパスキーは、設定アプリから一覧で確認できます。

設定 → アカウント → パスキー

ここに並んでいるものが「このパソコンの中にあるパスキー」です。サービス名をメモしておけば、それがそのまま買い替え後に手当てが必要なリストになります。

Chromeで作ったパスキーは、Chrome右上のメニューから「パスワードと自動入力」→「Googleパスワードマネージャー」でも確認できます。こちらに出てくるものは同期されている側なので、新しいパソコンで同じGoogleアカウントにログインすれば使えます。

両方を見比べて、設定アプリのほうにだけ載っているサービスを洗い出す。これが買い替え前のいちばん確実な棚卸しです。

② パスキー以外のログイン手段が残っているか確認する

パスキーが使えなくても、そのサービスにパスワードや別の認証手段が残っていれば、新しいパソコンからログインし直せます。逆に言えば、確認すべきはパスキーそのものではなく「控えの手段」です。

  • パスワードを覚えている、または安全な場所に保管してある
  • 登録してあるメールアドレスと電話番号が今も受け取れる
  • 二要素認証のアプリやSMSが新しい環境でも使える
  • リカバリーコードを発行していれば、それが手元にある

パスキーを設定したときにパスワードを消した、あるいは忘れてしまった場合は、古いパソコンがまだログインできるうちにパスワードの再設定まで済ませておくと安全です。

認証アプリ側の引き継ぎについては、スマホ買い替え前に二段階認証アプリを移行する手順もあわせて確認しておくと、パソコンとスマホを同時期に買い替える場合の取りこぼしを減らせます。

③ 控えのパスキーをもう1か所に足しておく

多くのサービスは、1つのアカウントに複数のパスキーを登録できます。今のパソコンに加えて、スマートフォンや同期される資格情報マネージャーにもう1つ登録しておけば、パソコンが変わっても入口が残ります。

Windows 11では、サードパーティのパスキーマネージャーをWindows側に組み込む仕組みも用意されています。設定 → アカウント → パスキー → 詳細オプションから、対応アプリを有効にできます。すでにパスワード管理アプリを使っているなら、保存先をそちらに寄せておくのは現実的な選択です。

パスワード管理アプリ自体を乗り換える場合は、パスキーや二段階認証の扱いが移行作業のつまずきどころになります。事前に確認する項目はパスワードマネージャーを乗り換える前に確認すること|エクスポート・2FA・重複整理にまとめています。

あわせて覚えておきたいのが、Windows 11 バージョン24H2以降では、アプリがパスキーにアクセスする前に利用者へ確認が出るようになっている点です。ここで拒否したままだと、そのアプリではパスキーの登録も認証も動きません。設定 → プライバシーとセキュリティ → パスキーアクセスから、アプリごとに許可・ブロックを見直せます。新しいパソコンでうまくいかないときは、この画面も確認してみてください。

保存先をあとから変えるには(登録し直しの手順)

保存先を選ぶのは、パスキーを作るときの一度だけです。「このパスキーの保存先だけ変える」という操作は用意されていないので、変えたいときは新しい保存先で登録し直すことになります。どの画面を開いて何をするのかを順に見ていきます。

登録のときに出る選択肢を、設定側で変えておく

登録のときにどの保存先が出るかは、Windows側の設定で決まります。設定 → アカウント → パスキー → 詳細オプションを開くと、このパソコンで使えるパスキーの保存先をオン・オフする項目が並んでいます。以下はWindows 11の画面です。

このうちパソコン内への保存を受け持っているのが「Save passkeys to this Windows device」(このWindowsデバイスにパスキーを保存する、の意)という項目です。Microsoftの説明では、端末内に保存したパスキーを保存・使用する選択肢が欲しい場合にこれをオンにする、とされています。裏を返すと、ここをオフにしておけば、登録のときにパソコン内へ保存する選択肢そのものが出なくなります。

もう一つ、Microsoftのサポートにはすでに同期される資格情報マネージャーに別のパスキーを保存している場合、Windowsデバイス(Windows Hello)の選択肢は表示されないことがあると書かれています。先に同期される保存先で1つ登録しておくと、次からうっかりパソコン内に保存してしまう場面が減る、ということです。

すでにWindows Helloに入っているパスキーを移すときの順番

パスキーはコピーも書き出しもできないので、保存先を同期される場所に変えるときは登録のやり直しになります。気をつけるのは順番だけです。

  1. サービス側のパスキー管理画面で、同期される保存先を選んで新しいパスキーを登録する
  2. いったんサインアウトして、登録したパスキーで実際にログインできることを確かめる
  3. 確認が取れてから、古いWindows Helloのパスキーを削除する

先に削除してしまうと、新しい登録が済むまでの間だけ入口が消えます。消すのは最後と覚えておけば十分です。

サービスごとのパスキー管理画面の場所

登録と削除の操作は、Windowsの設定ではなくサービス側の画面で行います。公式に場所が案内されているものは次のとおりです。

  • Googleアカウント:ヘルプの案内では、myaccount.google.com/signinoptions/passkeys を開くか、「セキュリティ」から「Google にログインする方法」→「パスキーとセキュリティ キー」へ進みます。
  • Microsoftアカウント:サポートの案内では、account.live.com/proofs/manage の「高度なセキュリティ オプション」から操作します。
  • Apple:Appleサポートによると、iOS 18・iPadOS 18・macOS Sequoia以降は「パスワード」アプリでパスワードやパスキーを管理します。保存したパスキーはiCloudキーチェーンで承認済みのデバイス間に同期されます。

サービスによって画面の呼び方は違いますが、ログイン方法やセキュリティの設定の中にパスキーの一覧があると考えて探すと見つかります。

新しいパソコンで使えなかったときの立て直し方

準備が間に合わないまま買い替えてしまった場合でも、たいていは手が残っています。順番に進めるのが早道です。

  1. そのサービスに他のログイン手段が残っていないか確認する(パスワード、SMS、認証アプリ、リカバリーコード)
  2. ログインできたら、アカウントのセキュリティ設定で古いパソコンのパスキーを削除する
  3. 新しいパソコンでパスキーを作り直す。保存先を選ぶ画面が出たら、同期される保存先を選ぶ
  4. どの手段でも入れない場合は、サービス側の本人確認による回復手続きに従う

4番目については、自分で回避しようとせず、必ずサービスの正規の窓口を使ってください。本人確認の手順はサービスごとに違います。

古いパソコン側に残ったパスキーは、設定 → アカウント → パスキーで、パスキー名の横のメニューから削除できます。パソコンを人に譲る、下取りに出す、処分するといった場合は、消しておいたほうが安心です。ただし削除するとそのパスキーではサインインできなくなるので、別のログイン手段が使えることを確かめてから実行してください。

ブラウザに保存していたブックマークの引き継ぎについては、PC買い替え時にブラウザのブックマークを移行する方法でまとめています。ブックマークは書き出して持っていけますが、パスキーは持っていけない、という違いを押さえておくと準備の順番を決めやすくなります。

パソコンの買い替えでは、パスキー以外にも引き継ぎ忘れやすいものがあります。写真やLINE、2段階認証も含めた全体の順番は機種変更・PC買い替えでデータを失わない順番にまとめています。身に覚えのないログインの通知が届いたなど、乗っ取りが心配なときはアカウントを乗っ取られたかもと思ったらを、Apple・Googleアカウントの乗っ取りが証券口座の被害につながった件は証券口座の不正取引とパスキーを預けた先を守る設定を見てください。

事業者をまたいで移せるようにする標準づくりも進んでいる

いま手元でできることは以上ですが、「保存先を乗り換えられない」という状態そのものを変えようという動きもあります。

パスキーの標準を策定しているFIDOアライアンスは、Credential Exchange Format(CXF)という仕様を公開しています。パスワードやパスキーを含む資格情報を、事業者をまたいで受け渡すための共通のデータ形式を定めようとするものです。仕様書には、これまで資格情報の提供者どうしで資格情報を渡すための規範的な構造がなく、相互運用性を欠いていた、という趣旨が書かれています。

ただし注意が要ります。この記事で確認した文書は2025年3月13日付のレビュー草案で、そこには「仕様が変わる可能性があるため、実装の基礎とすることを意図していない」と明記されています。つまり、将来的に保存先の引っ越しが楽になる可能性はあるものの、いまパソコンを買い替える人が使える手段ではありません。

今回の買い替えは、あくまで前の章までに書いた「別のログイン手段を確保しておく」「控えのパスキーを別の場所に足しておく」で対応することになります。

よくある質問

パソコンを買い替えたら、パスキーの再設定は必要ですか?

保存先によって変わります。Windows Hello(「このWindowsデバイス」)に保存したパスキーは新しいパソコンへ移せないため、買い替え後にもう一度登録し直すことになります。

一方、GoogleパスワードマネージャーやiCloudキーチェーンのように同期される保存先に保存したものは、新しいパソコンで同じアカウントにログインすればそのまま使えます。まず確かめるのは「どこに保存したか」です。

Windows Helloに保存したパスキーを、新しいパソコンへコピーできますか?

できません。ブックマークのように書き出して持っていく手段は用意されていません。

秘密鍵は、そのパソコンのWindows Helloのロック解除(生体認証またはPIN)と結びついた形で保存されています。取り出せないようにしてあるからこそ安全という設計なので、新しいパソコンでは移行ではなく登録のやり直しになります。

いまどこに保存されているかは、どうやって確認できますか?

Windowsの設定 → アカウント → パスキーで一覧を確認できます。ここに並んでいるものが、このパソコンの中にあるパスキーです。

あわせて、パスキー以外のログイン手段(パスワード、登録済みのメールアドレスと電話番号、二要素認証、リカバリーコード)が残っているかも、買い替える前に確かめておいてください。

新しいパソコンでパスキーが使えなかったら、もうログインできませんか?

別のログイン手段でログインできれば、新しいパソコンでパスキーを作り直せます。まずパスワード、SMS、認証アプリ、リカバリーコードのどれかが残っていないかを確認してください。

ログインできたら、アカウントのセキュリティ設定で古いパソコンのパスキーを削除し、新しいパソコンで作り直します。保存先を選ぶ画面が出たら、同期される保存先を選んでおくと次の買い替えが楽になります。どの手段でも入れない場合は、自分で回避しようとせず、サービス側の本人確認による回復手続きに従ってください。

まとめ

  • パスキーは秘密鍵を手元のデバイスに保存する仕組みで、保存先によって新しいパソコンで使えるかどうかが変わる
  • GoogleパスワードマネージャーやiCloudキーチェーンのように同期される保存先なら、同じアカウントでログインすれば引き継げる
  • Windows Hello(このWindowsデバイス)に保存したものは同期もバックアップもされず、新しいパソコンへは移せない
  • 買い替え前に「設定 → アカウント → パスキー」で一覧を確認し、パスキー以外のログイン手段が残っているかを見ておく
  • 控えのパスキーをスマホや同期される保存先にもう1つ登録しておくと、買い替えでつまずきにくい
  • 事業者をまたいだ移行の標準化は進んでいるが、2025年3月時点ではまだ草案の段階

ブックマークやメールと違って、パスキーは「移行作業」ではなく「作り直し」になります。作業そのものは難しくありませんが、新しいパソコンで最初にログインする手段だけは、古いパソコンが動くうちに確保しておく必要があります。

買い替えの準備リストにブックマークとメールを書いているなら、その隣に「パスキーの一覧を確認する」を1行足しておくと、あとで慌てずに済みます。

買い替え前に確認しておく項目を一通り並べたものはPC買い替え前に確認するデータ移行チェックリスト|Windowsの見落とし対策にあります。

パスキーのほか、ブラウザのパスワード・ブックマーク・Office・メールなど、パソコンを買い替えるときに移すものと確かめる順番は、Daily Picks編集部のKindle本『PC買い替え「引っ越し」完全チェックブック』にもまとめています。

参考情報・出典

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