ゴキブリやハチ、ネズミが出て慌ててスマホで検索し、「500円〜」「1,000円から」といった広告の業者に電話したら、作業のあとに数万円から数十万円を請求された。こうした害虫駆除のトラブルが増えています。国民生活センターによると、害虫・害獣駆除の相談は増加が続き、2023年度は前年度の同じ時期と比べて約1.5倍になりました。特に10〜20歳代の相談が急増しています。
この記事では、国民生活センター、東京都、消費者庁の情報をもとに、広告の料金の見方、電話と現地で確かめること、追加作業の断り方、請求に納得できないときの相談先を、依頼の流れに沿ってまとめました。
実際にあった相談
国民生活センターが紹介している事例では、20代の女性が「約500円〜」と広告に書かれた業者に依頼したところ、作業後に約20万円を請求されました。20代の男性は「約1,000円から」の業者に電話し、料金の説明がないまま作業され、約50万円を請求されています。東京都の事例では、「550円〜」の広告を見て依頼した男性が、現地で「卵があるので駆除が必要」と言われ、約8万円を支払っています。
国民生活センターは「3ケタ台など極端な格安料金で依頼できることはまずありません」と注意しています。広告の金額は「最も簡単な作業の、最も安い場合」の数字で、出張費や薬剤費、作業費が別にかかることがほとんどです。
依頼する前に:広告の画面を保存する
業者を探したら、電話をかける前に、広告やサイトの画面をスクリーンショットで保存しておきます。あとで「広告の料金と全然違う」と話すときに、何が書いてあったかを示す証拠になります。保存しておきたいのは次のところです。
- 表示されていた料金と、「〜」「から」などの書き方
- 料金に含まれるもの・含まれないものの説明(出張費、薬剤費、見積もり費用など)
- 会社名、住所、電話番号
- キャンセル料の説明
- 画面を見た日時と、検索に使った言葉
検索結果のいちばん上に出る広告だから信頼できる、ということはありません。会社名で検索して、所在地や口コミ以外の情報(自治体の注意喚起に名前が出ていないかなど)も確かめておくと安心です。

業者を選ぶときに見ておくところ
慌てているときほど、広告の金額の安さだけで選んでしまいがちです。電話をかける前に、次の点を見比べておきましょう。
- 会社の所在地が書かれているか。地図で見て、実在する事務所か
- 料金表に「出張費」「見積もり費用」「薬剤費」などの内訳があるか
- 「〜円から」だけでなく、よくある作業の料金の例が書かれているか
- キャンセル料や支払い方法の説明があるか
- 保証の内容(再発したときの対応)が書かれているか
すべてがそろっている業者なら安心、とまでは言えませんが、書かれていないことが多い業者ほど、現地で金額が大きく変わるおそれがあります。住んでいる地域の業者や、自治体が紹介している業者を選ぶのも一つの方法です。
害虫が出たときにまずやること
害虫が出た直後は、とにかく早く何とかしたいと焦ってしまいます。けれど、ゴキブリなどは、すぐに業者を呼ばなくても命に関わることはほとんどありません。まずは落ち着いて、次の順番で考えましょう。
1つ目は、市販の殺虫剤や駆除剤で対処できるかどうか。2つ目は、賃貸住宅なら管理会社に連絡できるかどうか。3つ目は、明るい時間まで待てるかどうかです。夜中に急いで呼ぶと比べる時間がなく、広告の安さだけで決めてしまいがちです。スズメバチなど危険が大きい場合を除けば、ひと晩おいて翌日に複数の業者を比べる方が、結果として安く確実に済むことが多くなります。
電話で確かめること
東京都は、電話をした時点で、作業内容、見積額、出張費、キャンセル料の有無を必ず確かめるよう呼びかけています。「現場を見ないと金額は分からない」と言われても、おおよその金額の幅は聞いておきましょう。
- 広告の金額で済むのはどんな場合か。自分の状況だとどのくらいになりそうか
- 出張費・見積もり費用はかかるか。見積もりだけで断った場合も払う必要があるか
- 総額が決まるのはいつか(現地で作業前に見積書を出すか)
- 支払い方法(現金のみか、後日の振り込みができるか)
- 会社名と担当者の名前
答えがあいまいだったり、「とにかく行ってから」と急かされたりする場合は、依頼を見送り、別の業者にも聞いてみましょう。国民生活センターは、害虫が出て慌てていても、できるだけ複数の業者から見積もりを取って比べることを勧めています。
現地では作業の前に見積書をもらう
業者が来たら、作業を始める前に、書面で見積書を出してもらいます。口頭の説明だけで作業を始めさせないことが、いちばん大切です。
- 作業の内容(何の駆除か、どこに何をするか)
- 項目ごとの金額(出張費、作業費、薬剤費、再発防止の工事など)と合計
- 保証の有無と内容
- 会社名、住所、担当者名
金額に納得できなければ、その場で断って構いません。「今やらないと増える」「卵があるので全部やらないとだめ」と不安をあおられても、すぐに決めず、家族や消費生活センターに相談する時間をもらいましょう。見積もりだけで帰ってもらう場合に費用がかかるかは、電話の時点で確かめておいた内容と照らし合わせます。
追加作業は元の見積もりと分けて確かめる
作業の途中で「巣が見つかった」「侵入口をふさぐ工事も必要」と追加を勧められることがあります。追加がある場合は、いったん作業を止めてもらい、追加分の内容と金額を書面で出してもらってから判断します。
その追加が本当に今必要なのか、あとで別の業者に頼んでもよいのかも聞いておきましょう。侵入口をふさぐ工事や床下の作業は、金額が大きくなりやすい部分です。賃貸住宅の場合は、建物に手を加える工事を自分の判断で頼まず、先に大家さんや管理会社に相談してください。建物の設備に原因がある場合、費用の負担が変わることもあります。
契約の書面を受け取ったら
作業を頼むと、契約書や作業の確認書にサインを求められることがあります。サインする前に、見積書と同じ金額・内容になっているかを確かめ、控えを必ずもらいましょう。
訪問販売のルールが当てはまる場合、クーリング・オフの期間は、法律で決められた内容の書面を受け取った日から数えます。書面をもらっていない、書面の内容が不十分といった場合は、期間の数え方が変わることもあります。受け取った書類は、あとで消費生活センターに見せられるよう、すべて保管しておきましょう。
作業のあとは請求書と見積書を照らし合わせる
作業が終わったら、請求書の項目と見積書の項目が一致しているかを確かめます。見積書にない項目が増えていたり、金額が変わっていたりしたら、その場で理由を聞きましょう。領収書は必ずもらい、見積書・請求書・広告のスクリーンショットと一緒に保管します。
国民生活センターは、高額な請求に納得できない場合は、その場で支払わず後日の支払いを検討するよう呼びかけています。ATMまで一緒に行って払わせようとするなど、強引に支払いを求められたときは、身の安全を優先し、家族や警察に相談してください。

払ってしまった・納得できないときは
自分から業者を呼んだ場合、訪問販売のルールは原則として当てはまりません。ただし、消費者庁の特定商取引法ガイドは、広告の表示額と実際の請求額に大きな開きがある場合、消費者は最初は広告の安い金額で契約するつもりしかなかったと考えられるとして、訪問販売の規制の対象になる例を示しています(鍵の修理の例)。国民生活センターも、害虫駆除のトラブルで、特定商取引法の訪問販売のルールが当てはまり、クーリング・オフなどができる場合があるとしています。
あてはまるかどうかは状況によって違うので、自分で判断せず、早めに消費者ホットライン「188」に電話して、近くの消費生活センターに相談しましょう。相談の前に、次の物をそろえておくと話が早く進みます。
- 広告・サイトのスクリーンショット
- 見積書、請求書、領収書、契約書(受け取った物すべて)
- 電話の日時、業者が来た日時、作業の時間
- 業者に言われたことのメモ
- 支払った方法(現金、カード、振り込み)と金額
相談の準備のしかたは通販トラブルで消費生活センターへ相談する前に準備するものも参考になります。カードで払った場合は、カード会社にも早めに連絡しておきましょう。
依頼から支払いまでのチェック表
| 段階 | やること | 残す物 |
|---|---|---|
| 探す | 極端に安い料金をうのみにしない。会社名で検索 | 広告・サイトのスクリーンショット |
| 電話 | 作業内容・見積額・出張費・キャンセル料を聞く | 通話の日時と内容のメモ |
| 現地 | 作業前に書面の見積書。納得できなければ断る | 見積書 |
| 追加 | 作業を止めてもらい、追加分を書面で | 追加の見積書 |
| 支払い | 見積書と請求書を照らし合わせる。納得できなければ後日に | 請求書・領収書 |
| 困ったら | 188に相談。カード払いならカード会社にも | 上の書類一式 |
自分でできる対策と、業者を呼ぶ前の選択肢
すべての害虫で業者が必要なわけではありません。ゴキブリなどは市販の殺虫剤や置き型の駆除剤で対処できる場合も多く、まず自分でできることを試してから業者を考えても遅くありません。一方、スズメバチの巣など危険が大きいものは、自分で駆除しようとしないでください。
ハチの巣は、自治体によっては駆除の相談を受け付けていたり、業者を紹介したり、費用の一部を補助したりしています。業者を探す前に、住んでいる市区町村のサイトで「ハチの巣」と検索してみましょう。賃貸住宅なら、建物の共用部分や外壁の巣は大家さんや管理会社が対応することもあるので、先に連絡してください。
一人暮らしを始めた家族にも伝えておく
国民生活センターによると、害虫駆除のトラブルは10〜20歳代で急に増えています。一人暮らしを始めたばかりで、害虫が出たときに頼れる人が近くにいない、という状況が背景にあると考えられます。
進学や就職で家を出た子どもや、若い家族には、「広告の安い金額をうのみにしない」「作業の前に書面の見積もりをもらう」「おかしいと思ったら188」の3つを伝えておきましょう。離れて暮らす家族がいる場合は、困ったときにすぐ連絡できるようにしておくことも大切です。
同じ型のトラブルに注意
「格安の広告で呼んだら、現地で高額を請求された」という型は、害虫駆除だけでなく、水漏れの修理や鍵の開け閉め、トイレのつまりなど、急いで業者を呼ぶ「暮らしのレスキューサービス」全般で起きています。確かめる順番は同じです。鍵のトラブルで業者を呼ぶ前に確かめることは鍵のトラブル対処法、工事の見積書の読み方はリフォーム見積書の「一式」と諸経費、退去費用の請求に納得できないときは賃貸の退去費用の問い合わせメール例文にまとめています。
よくある質問
Q.「見積もり無料」と書いてあれば、断っても費用はかかりませんか?
見積もりは無料でも、出張費が別にかかる業者もあります。電話の時点で「見積もりだけで断った場合に払う費用はあるか」を確かめ、メモしておきましょう。
Q.作業のあとに高額を請求されました。払わないといけませんか?
納得できない場合は、その場で払わず、後日の支払いにしてもらうことを考えましょう。契約の内容や広告との違いによっては、クーリング・オフなどができる場合があります。早めに188に相談してください。
Q.自分から呼んだのにクーリング・オフできるのですか?
原則として、自分から呼んだ場合は訪問販売のルールの対象外です。ただし、消費者庁は、広告の表示額と実際の請求額に大きな開きがある場合などは対象になる例を示しています。当てはまるかどうかは消費生活センターに相談してください。
Q.依頼した業者がまだ来ていません。今からでも断れますか?
作業の契約をしていなければ、断ることはできます。ただし、電話の時点で出張費やキャンセル料の説明があった場合は、その内容に沿って請求されることがあります。断るときは電話で伝え、日時と話した内容をメモしておきましょう。高額な請求をされた場合は188に相談してください。
Q.賃貸住宅で害虫が出ました。費用は誰が払いますか?
建物の構造や共用部分に原因がある場合は、大家さんや管理会社が対応することもあります。業者を呼ぶ前に管理会社に連絡し、対応してもらえるか、費用の負担はどうなるかを確かめましょう。
参考情報・出典
- 【広告の格安料金に要注意!】作業後に高額請求する害虫駆除トラブル|国民生活センター
- ネットの価格と全然違う!?害虫・害獣駆除のトラブルにご注意|国民生活センター
- ネット広告で見つけた害虫駆除サービス、格安なはずが高額請求に!|東京くらしWEB
- 訪問販売等の適用除外に関するQ&A|消費者庁 特定商取引法ガイド
- 水漏れ修理、解錠など「暮らしのレスキューサービス」でのトラブルにご注意|国民生活センター
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