〜暮らしの落書き帳〜

鍵の番号を撮影されると合鍵が作れる|職場に置いた鍵から複製した事件に有罪判決、警察庁は「写さない」と呼びかけ

暗い背景に重なった数本の金属製の鍵をモノクロで接写した写真に「鍵の番号を撮影されると合鍵が作れる 職場に置いた鍵から複製した事件に有罪判決 警察庁は「写さない」と呼びかけ」の文字を重ねたアイキャッチ画像

家の鍵の持ち手を、いま見てみてください。メーカー名の刻印のほかに、数字とアルファベットが並んだ列はありませんか。これが鍵番号(キーナンバー)です。この番号が読み取れる写真が1枚あれば、鍵そのものが手元になくても、同じ形の鍵を注文できてしまうことがあります。

2026年9月24日、神戸地裁が、職場に置かれていた同僚の鍵をスマートフォンで無断撮影し、その鍵番号をもとに通販サイトで合鍵を作って住居に侵入したとされる元警察官に、懲役2年・執行猶予4年の判決を言い渡しました。同じ手口の事件は、2026年3月にも福岡地裁で有罪判決が出ています。

この記事では、報道と、警察庁・日本ロックセキュリティ協同組合・美和ロックの公開情報をもとに、なぜ番号だけで合鍵が作れるのか、どの住宅でどれくらい「合かぎ」による侵入が起きているのか、そしてすでに番号を見られたかもしれないときに何を選ぶかを整理します。

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職場の机に置かれた鍵を撮影し、通販サイトで注文していた

神戸新聞NEXTが2026年9月25日に報じた内容によると、起訴されたのは兵庫県警篠山署の前交通課長(55)です。神戸地裁は9月24日、住居侵入と建造物侵入の罪で懲役2年・執行猶予4年(求刑懲役2年)の判決を言い渡しました。男はすでに懲戒免職になっています。

公判で明らかになった鍵の入手経路は、次のようなものでした。

  • 合鍵の元になった鍵は2本。1本は職場の机の上に置かれていたもの、もう1本は更衣室に入って所持品の中から探し出したもの
  • いずれも表面に刻印された鍵番号を撮影し、大手通販サイトに合鍵の作製を注文した
  • 注文から2週間ほどで合鍵が完成した
  • 更衣室のロッカーキーについても、同じように撮影して合鍵を作っていた

ここで押さえておきたいのは、鍵を持ち出してもいないし、鍵穴を壊してもいないという点です。机の上に数分置かれていた鍵を撮った、それだけで足りています。判決は「常習性は顕著で、規範意識の鈍麻は深刻だ」と述べた一方、示談金の支払いなどを考慮して執行猶予としました。

同じ構図の事件は、これが初めてではありません。西日本新聞は2026年3月12日、好意を寄せていた同僚女性宅に繰り返し侵入したとして住居侵入などの罪に問われた男に、福岡地裁が「不正に入手した合鍵を利用した計画的で悪質な犯行」として有罪判決を言い渡したと報じています。同紙は、鍵に刻印された番号をもとに無断で合鍵を複製して犯罪に悪用する事件が後を絶たない背景として、鍵番号を伝えればインターネットで合鍵が作れるサービスが広く普及したことを挙げています。

鍵番号の写真1枚から合鍵が届くまでの流れを4段階で示した図。1はメーカー出荷の純正キーに鍵の製造番号が刻印されていること、2は机の上や所持品の中にある鍵を数秒スマートフォンで撮られること、3はメーカーが鍵番号をデータ管理しているため番号を示せば全国どこからでも同じ鍵を注文できること、4は神戸地裁の公判で明らかになった事例では注文から2週間ほどで合鍵が完成したこと。あわせて、鍵番号が刻印される純正キーと、刻印されない店舗の複製キーの違いを並べ、メーカーは鍵番号と所有者をひも付けて管理していないため注文者が本当の持ち主かは誰にも判断できないと示している

鍵番号が刻印されているのは「純正キー」だけ

そもそも鍵番号とは何なのか。日本ロックセキュリティ協同組合(JALOSE)の防犯コラムは、こう説明しています。

  • メーカーから出荷された純正キーには必ず鍵番号が刻印されている。それが鍵の製造番号にあたる
  • 純正キーを元に鍵屋の店舗でコピーして作ったスペアキー(複製キー)には、通常その番号は刻印されない
  • メーカーは鍵番号をデータ管理しており、番号を示して注文すれば全国どこからでも同じ鍵が届く仕組みになっている

つまり鍵番号は、鍵の形を数字に置き換えたものです。JALOSEは「その番号さえ正しく伝えてしまえば全国どこにいてもカギの複製はできてしまう」としたうえで、不用意に他人へ見せないことを呼びかけています。

美和ロック(MIWA)の説明も同じ方向です。同社は純正キーと複製キーの違いについて、純正キーには「MIWA刻印とキーナンバーが入る」、店舗で作る複製キーは「キーナンバーは入らず、メーカー保証はおこなっていない」と案内しています。手元の鍵に番号が刻まれていれば、それは純正キーということになります。

なお番号の見分け方として、美和ロックは鍵番号に使われる文字を数字、大文字アルファベット(IとOを除く)、記号(+,-,=,$,%,&,*,#,?,/)と公開しています。持ち手の裏に2行で書かれていることもあります。

本人確認をしても「所有者確認」にはならない

「そもそも他人の鍵を注文できてしまうのがおかしいのでは」という疑問には、JALOSEが別のコラムで正面から答えています。要点は、鍵の所有者を確認する方法が実務上ない、という一点です。

鍵は代理店から建築会社へ渡り、建物の引き渡し時に施主へ渡ります。メーカーが把握できるのはどの代理店に納品したかまでで、その鍵がどの建物で使われているかは分かりません。そのため、鍵番号と所有者を結びつけた名簿のようなものが存在しません。JALOSEはこの結果として、「カギに刻印された番号を知っている=所有者とみなされる」という運用になっていると説明します。

だから、注文時に免許証などで本人確認をしても、それは「注文した人が誰か」の確認であって、「その人がその鍵の持ち主か」の確認にはなりません。西日本新聞も、メーカー側が鍵番号と所有者をひも付けて管理しておらず、注文者が本当の所有者かどうか判断できないのが現状だと伝えています。

神戸新聞の取材に対し、防犯アドバイザーの京師美佳さんは、合鍵作製の受注にあたって店舗業者は身分証の提示を求めるケースがあるが、ネット業者の多くは求めない、本人確認を義務付ける法的な規制はない、と述べています。同氏は「鍵は『個人情報』という意識を持ってほしい」「顔なじみの多い職場だから大丈夫という性善説はやめたほうがいい」とも指摘しています。

4階建て以上の共同住宅では、侵入手口の2位が「合かぎ」

ここまでは事件の話ですが、統計でも「合かぎ」は無視できない位置にあります。警察庁の防犯情報サイト「住まいる防犯110番」が公開している令和7年(2025年)の侵入窃盗の侵入手口を、住宅の形態別に並べると次のようになります。

住宅の形態1位2位3位合かぎの件数・割合
一戸建住宅(総数13,744件)ガラス破り無締り合かぎ364件・2.6%
共同住宅・3階建以下(総数2,675件)無締りガラス破り合かぎ346件・12.9%
共同住宅・4階建以上(総数1,588件)無締り合かぎガラス破り391件・24.6%
警察庁「住まいる防犯110番」の侵入手口(令和7年)より作成。「その他」「不明」を含む総数に対する割合

4階建て以上の共同住宅、つまり多くのマンションでは、侵入窃盗のおよそ4件に1件が「合かぎ」です。ガラス破り(11.0%)の2倍以上あります。同じ統計の侵入口を見ると、4階建て以上では表出入口が65.4%と圧倒的で、玄関から普通に入られていることが分かります。

ここでいう「合かぎ」には、無断で複製された鍵だけでなく、置き忘れた鍵や前の住人の鍵など、正規に作られた鍵が悪用された場合も含まれます。それでも、高層の集合住宅ほど「鍵を持っている人が玄関から入る」被害の比率が高いという傾向は、対策を考えるうえで手がかりになります。

警察庁が「合かぎ」への対策として挙げているのは、ドアの鍵は持ち歩き、郵便受け等玄関付近に置かない、必要最低限の本数のみを複製し確実に管理するの2つです。

室内の柔らかな光の中で、片手が緑色のキーホルダーが付いた数本の家の鍵を指先でつまんで差し出している写真

警察庁が挙げる3つの動詞は「見せない」「渡さない」「写さない」

同じ「住まいる防犯110番」の住まいの防犯対策のページには、今回の手口にそのまま重なる一文があります。

合鍵の不正作製を防止するため、鍵を家族等以外の必要のない人には「見せない」「渡さない」、写真や動画で「写さない」。

「渡さない」だけでなく「見せない」「写さない」が並んでいるのは、一瞬見えるだけで足りるからです。今日からできることを、費用のかからない順に並べます。

  1. 鍵を机やテーブルの上に置かない。京師さんは、カフェなどで席取りに鍵を置く行為を「極めて危険」としています。職場の机、更衣室、ジムのロッカー周辺も同じです
  2. 番号が出る面を隠す。持ち手にかぶせるキーカバーやキャップを付ける、ケースに入れる、シールを貼るなど。刻印が読めなければ注文はできません
  3. 普段使いを複製キーにする。鍵屋の店舗で作った複製キーには鍵番号が刻印されません。番号入りの純正キーは家に保管し、持ち歩くのは複製キーにする、という分け方ができます
  4. 鍵が写り込む写真をSNSに上げない。新居や新車の鍵の写真は、拡大すれば番号が読めることがあります
  5. 賃貸に入居するときは鍵交換を確認する。JALOSEは、以前の使用者が番号を控えたり写真に記録していれば同じ鍵を複製できるとして、入居時に不動産会社か家主へ交換を依頼することを勧めています
鍵番号を見られたかもしれないときに選ぶ対策を2つに分けた図。机の上に置いた・人前で出した・写真に写った心当たりがある場合は、シリンダーごと交換して古い鍵を使えなくする。番号を付け替えるだけでは古い番号が無効にならず、美和ロックも過去に見られた可能性があるならシリンダー交換を勧めていること、賃貸は先に管理会社へ相談することを挙げている。心当たりがない場合は、机やテーブルに置かない、キーカバーで番号の面を隠す、持ち歩くのは番号が刻印されない複製キーにする、鍵番号とID番号の2つがそろわないと複製できない方式に変える(美和ロックのあんしん認証プラスは税込1,320円)。下部に警察庁の呼びかけ「見せない」「渡さない」「写さない」を掲げている

すでに見られたかもしれないときは、鍵の交換まで考える

ここからは、心当たりがある場合の話です。選択肢は大きく2つあり、どちらを選ぶかは「番号をもう見られたかどうか」で変わります。

ひとつは、鍵番号だけでは複製できない方式に変える方法です。JALOSEが説明するとおり、鍵番号とは別のID番号がペアになっていて、2つの情報がそろわないと複製できない仕組みを採る鍵があります。美和ロックの場合はこれを「セキュリティ認証IDシステム」と呼び、後付けできるサービス〈あんしん認証プラス〉を公式オンラインショップ「MIWA Direct」で提供しています。料金は税込1,320円で、鍵番号を新しいものに変更したうえでセキュリティカードが発行され、以後の合鍵作製にはカードのID番号が必要になります。手元の鍵がすでにこの方式かどうかは、同サイトの「あんしんチェック」で確認できます。

ただし、ここには重要な但し書きがあります。美和ロックは「あんしん認証プラスをお申込みいただいてもお手元のキーで合鍵を手配できてしまう」ため、古い鍵は同梱の保管袋に入れて保管するよう案内しています。古い番号が無効になるわけではないということです。そのため同社は、こうも書いています。

お使いのキーの鍵番号を過去に他人に見られた可能性がある場合は、シリンダー交換をおすすめします。

つまりもうひとつの選択肢が、シリンダー(鍵穴)ごと交換して、古い鍵を使えなくする方法です。番号を見られた疑いがあるなら、番号を付け替えるだけでは足りません。シリンダー交換の判断材料、型番の確かめ方、業者に頼むときに見積もりで聞くことは、玄関の鍵交換は自分でできる?業者に頼む?にまとめています。賃貸の場合は自分の判断で交換すると原状回復を求められることがあるため、先に管理会社へ相談してください。

なお、合鍵そのものの費用感も押さえておくと判断しやすくなります。MIWA Directの純正キーはU9キー・URキーが1,100円、WRキーが1,540円、PRキー・PSキーが1,650円(いずれも税込・送料別)です。純正キーは高精度な代わりに作製に日数がかかり、即日対応はできない、というのが同社の説明です。

ひとつ補足しておくと、MIWA Directは現在、注文時に鍵そのものの撮影を求めています(セキュリティ認証IDシステム付きの場合は撮影不要)。番号を入力するだけでは注文できない形です。ただしこれは同社の公式ショップの運用であって、鍵番号を伝えれば作れるサービス自体がなくなったわけではありません。今回の事件で使われたのも、メーカーの公式ショップではなく大手通販サイトでした。

よくある質問

Q. 自分の鍵に番号が刻印されていません。安全と考えてよいですか。 A. 番号から注文される心配は小さくなります。美和ロックによると、店舗で作られた複製キーには鍵番号が入りません。ただし鍵の形そのものを写した写真から作られる可能性は残ります。神戸新聞の取材で京師さんは、溝の形が分かれば3Dプリンターでも作製できると述べています。番号の有無にかかわらず、鍵を人目にさらさないことが基本です。

Q. 鍵番号を隠すカバーを付ければ、それで十分ですか。 A. 番号を読み取られない効果はあります。ただしカバーは外せますし、持ち歩いている間に外れることもあります。すでに見られた可能性がある鍵には効きません。その場合はシリンダー交換の検討が必要です。

Q. 賃貸ですが、入居時に鍵は交換されているはずです。確認する方法はありますか。 A. 契約時の重要事項説明書や見積書に「鍵交換費用」の項目があるかを確かめてください。費用を負担しているのに交換されていないケースもあります。管理会社に、シリンダーごと交換したのか、同じシリンダーのまま鍵を追加しただけなのかを聞くのが確実です。

Q. 家族や恋人に鍵を渡しています。問題がありますか。 A. 警察庁の呼びかけは「家族等以外の必要のない人には見せない・渡さない・写さない」です。渡す相手を限ることと、何本作って誰が持っているかを把握しておくことが要点になります。警察庁も対策として「必要最低限の本数のみを複製し確実に管理する」を挙げています。

Q. 合鍵を作られたかどうかを、後から確かめる方法はありますか。 A. 一般には確かめられません。メーカーは鍵番号と所有者をひも付けて管理していないため、誰が注文したかを照会することもできません。だからこそ、疑いがある段階でシリンダーを替えるという判断になります。身の危険を感じる場合は、鍵の対応と並行して警察へ相談してください。

まとめ

  • 神戸地裁は2026年9月24日、職場に置かれた同僚の鍵をスマートフォンで撮影し、鍵番号をもとに通販サイトで合鍵を作って侵入したとされる元警察官に、住居侵入・建造物侵入の罪で懲役2年・執行猶予4年を言い渡した。合鍵は注文から約2週間で完成していた
  • 同種の事件で、福岡地裁も有罪判決を出している(2026年3月12日報道)。鍵番号を伝えればネットで合鍵が作れるサービスの普及が背景にある
  • 鍵番号はメーカー出荷の純正キーに刻印された製造番号で、番号を示せば全国どこからでも同じ鍵を注文できる。店舗で作る複製キーには刻印されない
  • メーカーは鍵番号と所有者をひも付けて管理していないため、注文時に本人確認をしても所有者の確認にはならない
  • 警察庁の令和7年の統計では、4階建て以上の共同住宅で侵入手口の2位が「合かぎ」(391件・24.6%)。同形態の侵入口は表出入口が65.4%を占める
  • 警察庁の呼びかけは「見せない」「渡さない」「写さない」。机の上に置かない、番号が出る面を隠す、持ち歩くのは番号のない複製キーにする、といった対応がすぐ取れる
  • すでに番号を見られた可能性があるなら、番号の付け替えでは足りない。美和ロック自身も、その場合はシリンダー交換を勧めている

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鍵を替えるかどうかを決めるときは、今の鍵の型番と扉の厚みを先に控えておくと話が早く進みます。賃貸の場合は、誰が費用を負担するかの線引きも先に確認しておくと揉めにくくなります。

参考情報・出典

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