答え:相続した実家などの空き家を売るときは、売った利益(譲渡所得)に税金がかかります。ただし、昭和56年5月31日以前に建てられた家を、相続から3年目の年末までに、1億円以下で売るなどの条件を満たすと、利益から最大3,000万円を引ける特例(被相続人の居住用財産の3,000万円特別控除)があります。相続人が3人以上なら2,000万円までです。特例は2027年12月31日までの売却が対象で、使うには確定申告が必要です。
親が住んでいた家を相続したものの、だれも住む予定がない。売るなら「税金はいくらかかる?」「3,000万円の控除は使える?」「何に気をつける?」が気になります。この記事では、国税庁・国土交通省・法務省のページをもとに、税金の計算のしかたと特例の条件、売る前に確かめることをまとめます。
(確認日:2026年10月30日。国税庁タックスアンサーは令和8年4月1日現在の法令等によります。税金の判断は個別の事情で変わるので、迷ったら税務署か税理士に確かめてください)
空き家を売ったときの税金のしくみ
家や土地を売って利益が出ると、その利益(譲渡所得)に所得税と住民税がかかります。ほかの所得とは分けて計算します。
課税される譲渡所得=売った金額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除
- 取得費:その家と土地を買ったときの代金など。相続した場合は、親が買ったときの金額と時期をそのまま引き継ぎます。相続人が払った登記の費用や不動産取得税も、取得費に入れられます(業務に使っていない不動産の場合)
- 取得費が分からないとき:昔の契約書が見つからないなどで分からなければ、売った金額の5%を取得費にできます(例:3,000万円で売ったら150万円)。ただし、5%を使うと登記の費用などは足せません
- 譲渡費用:売るためにかかったお金。不動産会社への仲介手数料、測量費、契約書の印紙代、売るために建物を取り壊した費用など
税率は「持っていた期間」で変わる
| 区分 | 所有期間(売った年の1月1日時点) | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 15% | 5% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% |
相続した家は、親が買った時から数えます。親が長く住んでいた家なら、ほとんどの場合「長期」になります。
3,000万円特別控除が使える条件
正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます。条件を満たすと、利益から最大3,000万円を引けます。主な条件は次のとおりです。
| 確かめること | 条件 |
|---|---|
| いつ売るか | 2016年4月1日〜2027年12月31日の売却。かつ、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(例:2024年5月に亡くなったら2027年12月31日まで) |
| どんな家か | 昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた家。マンションなど区分所有の登記がある建物は対象外 |
| だれが住んでいたか | 亡くなる直前に、亡くなった人がひとりで住んでいた(ほかに住んでいた人がいない) |
| 相続後の使い方 | 相続から売るまで、だれかに貸したり、事業に使ったり、住んだりしていない |
| 売る金額 | 1億円以下(ほかの相続人が売った分なども合わせて判定) |
| 売る相手 | 親子・夫婦など特別な関係の人ではない |
| 控除額 | 最高3,000万円。2024年1月1日以後の売却で、その家と土地を相続した人が3人以上なら、1人2,000万円まで |
| ほかの特例 | 相続税の取得費加算の特例(下で説明)などと、同じ資産で一緒には使えない |
家をそのまま売るか、取り壊すか
古い家のままでは使えず、次のどれかが必要です。
- 耐震リフォームをして、今の耐震基準を満たした家を売る
- 家を全部取り壊して、土地だけを売る
- 家のまま売り、買った人が売った年の翌年2月15日までに耐震工事か取り壊しをする(2024年1月1日以後の売却から)。国土交通省は、買主が取り壊す特約を付けて売る場合も対象になりうるとしています
3の場合でも、期限までに工事や取り壊しが終わらないと特例は使えません。売買の契約書に、だれがいつまでに何をするかを書いておくと安心です。
親が老人ホームに入っていた場合
亡くなる前に老人ホームなどに入っていて、家が空いていた場合も、次の条件を満たせば対象になります(国税庁 No.3307)。
- 家を出る直前に、要介護・要支援の認定(障害の場合は障害支援区分の認定)を受けていた
- 家を出てから亡くなるまで、家を本人の物を置いておくなどに使い続け、人に貸したり、ほかの人が住んだりしていない
- 入所中の主な住まいがその施設だった
計算の例
親が40年前に建てた家を相続し、取り壊して土地を2,500万円で売った例です(取得費は分からないので5%、取り壊しと仲介手数料で200万円かかったとします)。
| 売った金額 | 2,500万円 |
| 取得費(5%) | 125万円 |
| 譲渡費用 | 200万円 |
| 利益(譲渡所得) | 2,175万円 |
| 特例を使わない場合の税金の目安 | 約440万円(長期:2,175万円×(15%×1.021+5%)) |
| 3,000万円特別控除を使った場合 | 利益が控除の範囲に収まるので0円(確定申告は必要) |
使えないときの「相続税の取得費加算」
家が昭和56年6月以降の建築だったなど、3,000万円特別控除が使えないときに確かめたいのが「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(国税庁 No.3267)です。
- 相続税を払った人が、相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合に使える
- 払った相続税のうち、売った財産に当たる分を取得費に足せる(そのぶん利益が減る)
- 相続税がかかっていない(基礎控除の範囲内だった)人は使えない
- 3,000万円特別控除と同じ資産で一緒には使えないので、どちらが得かを比べて選ぶ
売る前に確かめること(注意点)
- 相続登記を済ませる:家を売るには、名義を相続人に変える登記が必要です。相続登記は2024年4月1日から義務になり、相続を知った日から3年以内にしないと10万円以下の過料の対象になりえます。2024年3月以前の相続で登記していないものは2027年3月31日までです(法務省)
- 建てた年を確かめる:登記事項証明書(登記簿)の「原因及びその日付」や、建築確認の書類で、昭和56年5月31日以前かを確かめます。ここで特例が使えるかが決まります
- 相続後に貸したり住んだりしない:売るまでの間に人に貸すと、特例が使えなくなります
- 市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」を取る:確定申告に必要な書類で、家のある市区町村が出します。申請に時間がかかることがあるので、売る前から窓口のページで必要書類を確かめておきます
- 期限から逆算する:相続から3年目の年末と、制度の期限(2027年12月31日)のうち早いほうが締め切りです。取り壊しや買い手探しには時間がかかります
- 相続人どうしで決めておく:だれが売るか、お金をどう分けるか。相続人が3人以上だと控除が1人2,000万円までになる点も含めて話し合います
確定申告のしかた
特例を使うには、税金が0円になる場合でも、売った年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告をします(国税庁 No.3306・No.3102)。主な書類は次のとおりです。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 売った家・土地の登記事項証明書など
- 市区町村長が出す「被相続人居住用家屋等確認書」
- 家を残して売った場合は、耐震基準を満たすことの証明書(耐震基準適合証明書など)
- 売った金額が1億円以下であることが分かる売買契約書の写しなど
売らずに持ち続ける場合の注意
空き家を手入れせずに放っておくと、市区町村から「特定空家等」や「管理不全空家等」として指導を受けることがあります。改善しないまま「勧告」を受けると、土地の固定資産税を安くする特例(住宅用地特例)が外れ、税金が上がります(2023年12月13日施行の改正空家法)。持ち続けるなら、換気・草刈り・郵便物の整理など、定期的な管理が必要です。
冬に空き家を置いておくときの水道の凍結や防犯は、空き家の冬の水道凍結と防犯にまとめています。
出典
- 国税庁 タックスアンサー「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」「No.3307 老人ホーム等に入所していた場合」「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」「No.3258 取得費が分からないとき」「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」「No.3202 譲渡所得の計算のしかた」「No.3102 土地や建物を売ったとき」
- 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」「空家等対策の推進に関する特別措置法」
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

⚡ いま読まれているトレンド
2027年用年賀状の発売日は11月2日|元日に届く差出期限は12月27日に繰り下げ
「アララメッセージ」の不正アクセスでメールアドレス約7,700万件|自分は対象?確かめ方と偽メールの見分け方
楽天証券・野村證券の「デジタル特典付き社債」購入者の情報が漏えいの可能性|自分は対象?確かめ方と偽メールの見分け方












コメント