〜暮らしの落書き帳〜

賃貸で鍵を紛失したら|連絡の順番と、鍵交換費用は誰が負担するかの判断基準

賃貸の玄関ドアのシリンダー錠。鍵をなくしたときの連絡の順番と鍵交換費用の記事のアイキャッチ 生活トラブル

※本記事はアフィリエイト広告(PR)を含みます。

鍵がない。玄関の前で立ち尽くしているとき、頭にあるのは「どうやって中に入るか」の一点だけだと思います。ところが賃貸住宅の鍵の紛失は、その場で急いだ判断が、あとから数万円の請求書になって返ってくるという性質を持っています。

この記事では、どこへどの順番で連絡するのかと、鍵の交換費用は誰が払うのかを、国土交通省のガイドラインと賃貸住宅標準契約書、裁判例、保険会社が公表している条件にあたって整理します。鍵が回らない・折れた・開かないなど紛失以外の症状は鍵のトラブル対処法で症状別にまとめています。

鍵をなくしたと気づいたら、先に「連絡の順番」を決める

深夜に検索して、いちばん上に出てきた解錠業者へ電話する。ドアは確かにすぐ開きます。けれども、そのあと費用の話がこじれるパターンが、消費者トラブルとして記録されています。国民生活センターが2024年11月19日に公表した「【広告より高額!?】出張解錠サービスの料金トラブルに注意」は、実例を紹介したうえで最後にこう書いています。「賃貸住宅の場合は大家や管理会社に、鍵の紛失時にどのような対応をしているか確認しましょう」。出発点は解錠業者ではなく、貸主側です。

賃貸で鍵をなくしたときの連絡の順番の図。1管理会社または大家に電話、2賃貸借契約書の3か所を確認、3火災保険の付帯サービスを確認、4それでも入れないときだけ解錠業者を呼ぶ。あわせて、無断でシリンダーを交換しない・合鍵だけ作らない・広告の金額だけで呼ばないという注意点を示している
賃貸で鍵をなくしたときの連絡の順番(国土交通省のガイドライン・標準契約書、国民生活センターの注意喚起をもとに作成)

なぜ、解錠業者より先に管理会社なのか

理由は契約の作りにあります。国土交通省の「賃貸住宅標準契約書(改訂版)」第9条第1項は、貸主が必要な修繕を行うこと、そして「乙(借主)の故意又は過失により必要となった修繕に要する費用は、乙が負担しなければならない」ことを定めています。鍵の交換は、手配するのは貸主、費用を出すのは借主という二段構えが基本形です。手配する側を飛ばして借主が勝手に動くと、この構えが崩れます。

同じ契約書の第9条第3項は、借主が自分の負担で勝手に直してよい修繕を別表第4として列挙しています。畳表やふすま紙、給水栓、電球の取替えなど費用が軽微なものばかりで、鍵もシリンダーも入っていません。さらに第8条第2項は、貸主の書面による承諾なく「改造若しくは模様替」を行ってはならないとしています。自分でシリンダーを付け替える行為は、ここに触れる可能性があります。

連絡より先にやると、あとで費用に跳ね返る3つのこと

自分で手配してシリンダーごと交換してしまうと、貸主が想定している仕様(マスターキー対応か、集合玄関と連動しているか)を外した製品になり、退去時にもう一度付け替える費用が乗ります。合鍵だけ作って紛失をなかったことにするのも避けてください。東京地方裁判所の平成22年6月11日判決では、鍵2本のうち1本を紛失し1本を複製していたことが争点になり、鍵本体の交換費用2万1000円(税込)の負担が認められています。

3つめは、広告の「○○円〜」だけを見て電話すること。国民生活センターは、安価な金額表示をうのみにせず出張料やキャンセル料も確認するよう呼びかけています。

「自分で対応してください」と言われたとき

管理会社が対応してくれないことはあります。国民生活センターが紹介する2024年6月受付の事例(20歳代・男性)は、オートロックのドアから締め出されて管理会社に連絡したものの「自分で対応してくれ」と言われ、自分で業者を探した結果、約5万円を支払ったという内容です。大事なのは、断られた事実を残すこと。電話した日時、担当者の名前、言われた内容をメモし、可能ならメールでも同じ内容を送っておいてください。

賃貸借契約書は、3か所だけ見ればいい

1つめは冒頭の「頭書」にある設備等の欄。標準契約書では、トイレや浴室と並んで「鍵」の行があり、右に(鍵No.   ・  本)という記入欄があります。国土交通省の解説にも「『鍵』:鍵番号と貸出本数をカッコの中に記入してください」とあり、ここに書かれた本数が退去時に返す本数の基準になります。

2つめは原状回復の条件を定めた別表第5(第14条第2項が、明渡し時にこの別表に基づいて内容と方法を協議すると定めています)。修繕分担表と負担単位のほか「原状回復工事施工目安単価」の表が入ります。単価は契約のときに書き込んでおく様式で、国土交通省が記入の参考として示す一覧には「玄関ドアの鍵 個」の行があります。契約書に単価が書いてあれば、あとの見積を測るものさしになります。

3つめは特約条項(標準契約書なら第18条)。「鍵交換費用は借主負担とする」といった条項が珍しくなく、ここに何が書いてあるかで次の章の結論が上書きされる場合があります。なお夜間の緊急連絡先は契約書本体ではなく「入居のしおり」や共用部の掲示にあることが多いので、番号だけはスマートフォンに登録しておくのが現実的な備えです。

鍵交換費用は誰が払うのか|国交省ガイドラインの線引き

費用負担の基準として実務で参照されるのが、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」です。平成23年8月に再改訂された版が最新です。妥当と考えられる一般的な基準を示したもので、国土交通省自身も「法的な拘束力を持つものでもない」としています。

鍵にかかる費用を誰が負担するかのケース別一覧表。紛失と破損は借主負担、入居者の入れ替わりや経年劣化による交換は貸主負担、紛失時は経過年数を考慮せず全額借主負担で負担単位はシリンダーの交換、という国土交通省ガイドラインの記述と該当する別表番号をまとめている
鍵にかかる費用は誰が負担するか(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表1〜4をもとに作成)

ガイドラインの別表1は、原状回復の対象を「借主が通常の住まい方をしていても発生するもの(区分A)」と「借主の使い方次第で発生したりしなかったりするもの(区分B)」に分けています。鍵は両方に顔を出し、区分Bには「鍵の紛失、破損による取替え」が、区分Aには「鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)」が入ります。同じ「鍵の交換」でも、なくしたから替えるのか、次の入居者のために替えるのかで負担する人が逆になるわけです。退去時に請求されたら、どちらなのかを確認してください。

鍵の紛失だけ「経過年数を考慮しない」と書かれている

ガイドラインの特徴は、年数がたつほど借主の負担が軽くなる仕組みです。壁のクロスなら「6年で残存価値1円となるような負担割合を算定する」とされ、10年住んで汚しても張替え代を全額払うわけではありません。ところが鍵は例外で、別表2には「鍵の紛失の場合は、経過年数は考慮しない。交換費用相当分を全額賃借人負担とする」とあります。なくした鍵が1本外に出ている以上、何年住んでいたかは関係がないという整理です。

「シリンダーの交換」と「錠前ごとの交換」は別の話

見積で効いてくるのが工事の単位です。ガイドラインは借主の負担単位を「鍵:紛失の場合はシリンダーの交換」と明記し、精算明細書の様式(別表4)でも玄関ドアの鍵の修繕内容は「シリンダー交換」と印刷されています。シリンダーは鍵を差し込む筒の部分で、ドアノブや錠前の本体は含みません。

見積書に錠前一式の交換や建物全体のマスターキーの入れ替えが並んでいたら、ガイドラインの言う負担単位を超えている可能性があります。すぐ拒否する必要はありませんが、「なぜシリンダー交換では足りないのか」は一度確認する価値があります。オートロック連動の電子錠のように、構造上シリンダーだけの交換が成り立たない鍵もあります。

契約書の特約があると結論が変わる。ただし特約にも条件がある

ここまでが一般原則で、実際の請求書は特約によって違う形になることがあります。ガイドラインは借主に特別の負担を課す特約が有効とされるための3要件を示しています。

  1. 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
  2. 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
  3. 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

背景には最高裁判所の判断(平成17年12月16日)があります。通常損耗の補修費用を借主に負わせるには、その範囲が契約書の条項自体に具体的に明記されているか、貸主が口頭で説明して借主が明確に認識し合意したと認められることが必要だ、という考え方です。

ガイドラインには、鍵交換費用そのものが争われた裁判例も収録されています。東京地方裁判所の平成21年9月18日判決は、入居時に支払った鍵交換費用1万2600円の負担特約について、チラシと重要事項説明書に記載があり仲介業者が口頭で説明していることから明確に合意されていると判断。鍵の交換は前の借主の鍵を使った侵入の防止につながり借主自身の防犯に資すること、金額も相応の範囲であることを理由に、消費者契約法10条には違反しないとしました。

先に挙げた平成22年6月11日判決では、鍵の交換費用2万1000円の負担が認められた一方、貸主が求めた「鍵が返ってくるまでの損害金(月額47万円)」は失当として退けられ、違約金条項も消費者契約法10条違反で無効とされました。鍵の交換費用そのものは通りやすく、それに乗せた付帯的な請求は通りにくい。争う余地は、金額の中身と上乗せされた項目のほうにあります。

火災保険で戻ってくるのか|「なくした」と「盗まれた」で違う

火災保険(家財保険)で鍵の費用がまかなえないか、という疑問はよく出ます。セットされる借家人賠償責任は火災・破裂爆発・水濡れといった事故が対象で、鍵をなくしたこと自体はここに入りません。鍵の費用が出るとすれば、別枠の費用保険金か、保険に付いている無料サービスのどちらかです。

賃貸で広く使われている全管協少額短期保険の家財保険には「ドアロック交換費用保険金」があります。条件は「入居物件の玄関ドアの鍵が盗まれた場合で事故の日から180日以内に支出したドアロックの交換に要した費用をお支払いします」。1事故につき3万円が限度で、「警察署宛に被害の届出をし、受理されたことが条件となります」という注記が付きます。

ここが分かれ目です。「どこかで落とした」と「盗まれた」は、保険の上では別の出来事として扱われます。落としただけなら遺失であって被害の届出は受理されず、交換費用の保険金も出ません。かばんごと盗られた、車上狙いに遭ったなど、盗難として届け出られる事情がないか確かめてください。事実と違う届出はできませんが、本当は盗難だったものを「なくした」と自己申告すると、使えるはずの補償を自分で閉じてしまうことになります。

もうひとつの経路が、保険に付く生活トラブルの応急対応サービスです。日新火災の「お部屋を借りるときの保険」に付く「すまいのサポート24」は「家のカギの紛失・破損による玄関および勝手口の解錠」を対象に、24時間365日、30分程度の応急処置を無料で行います。ただし「家カギの破壊解錠・シリンダーの交換・新規のカギの取り付け・カギ製作等」は対象外で、利用は「保険期間中1回が限度」です。

確かめること見る場所結論の目安
鍵開けの作業費は出るか付帯サービス(例:すまいのサポート24)解錠のみ・30分程度の応急処置まで無料。破壊解錠やシリンダー交換は対象外、期間中1回まで
シリンダー交換費は出るか費用保険金(例:ドアロック交換費用保険金)鍵が「盗まれた」場合で、警察への被害届が受理されていることが条件。3万円限度・180日以内
落としただけのときは同上盗難にあたらないため、交換費用の保険金は期待しにくい
大家さんへの賠償は借家人賠償責任火災・破裂爆発・水濡れが中心で、鍵の紛失は想定されていない
※商品ごとに条件が異なります。必ずご自身の保険証券と約款で確認してください。

確認は、保険証券で会社名と商品名を特定し、その商品のページで「付帯サービス」と「費用保険金」の2語を探すのが早道です。電話でも「ドアロック交換費用の補償は付いていますか」と項目名で聞くと話が通ります。

夜間・休日に管理会社がつながらないとき

緊急連絡先は、次の順で探します。

  • 管理会社の留守番電話の案内(夜間専用ダイヤルが自動音声で流れることがあるので最後まで聞く)
  • 管理会社サイトの「緊急時のご連絡」ページ。24時間受付のコールセンターを別に持つ会社があります
  • 共用部の掲示板、集合ポスト横、エレベーター内の掲示
  • 家賃債務保証会社や「入居者サポート」などの月額サービス(鍵開けが含まれることがあります)
  • 火災保険の付帯サービス(前章のとおり24時間365日受付の商品があります)

これらを当たっても開かないときに、はじめて自分で解錠業者を探します。電話の時点で確認するのは、作業にあたる会社の正式名称と所在地(電話をつなぐだけの紹介サイトのことがあります)、出張料、断った場合のキャンセル料、深夜・時間外料金、支払い方法の5点。到着後は作業前に総額の見積を出してもらい、写真に撮ってください。国民生活センターが紹介した2024年4月受付の事例(20歳代・女性)では、「解錠で2,000円〜」と表示されていたのに作業後に約10万円を請求されています。

すでに高額な請求をされてしまった場合、国民生活センターのアドバイスは明快です。「後日納得した金額で支払う意思があることを示しつつ、その場での支払いはきっぱり断りましょう」。払わないと宣言するのではなく、金額を確定させてから払うと伝える形です。同センターは、広告の表示額と実際の請求額が大きく異なる場合などには「特定商取引法の訪問販売によるクーリング・オフなどが適用できる可能性があります」ともしています(訪問販売の期間は8日間。適用されるかは個別の事情によります)。相談先は消費者ホットライン「188(いやや!)」です。

管理会社の緊急連絡先にもつながらないとき

管理会社にも契約書の緊急連絡先にもつながらず、今夜のうちに家に入る必要がある場合の問い合わせ先の候補として、当サイトが提携している出張鍵サービスを2つ載せます。賃貸では解錠だけにとどめ、シリンダーの交換は管理会社の了承を得てからにしてください。問い合わせたら、出張料・キャンセル料を含む総額を作業前に確認します。

鍵をなくした・・・そんなときは【鍵のトラブル救急車】へ!

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退去時に揉めないための、記録の残し方

民法第622条の2は、賃貸借が終了して物件の返還を受けたとき、貸主は敷金から借主の債務の額を差し引いた残額を返すと定めています。鍵の交換費用は、この「差し引かれる側」に入るお金です。だからこそ、紛失した日の記録が効きます。

  • 管理会社へ連絡した日時、担当者の名前、言われた内容
  • 警察に遺失届を出した日時と届出先(盗難の可能性があるときは被害の届出)
  • 解錠業者の正式名称、作業内容、支払った金額の領収書
  • 交換したシリンダーの品番と、交換の前後の写真
  • 手元に残っている鍵の本数(契約書の頭書にある貸出本数と突き合わせる)

精算の場面では、ガイドラインの明細書様式(別表4)が目安になります。玄関ドアの鍵の行は「シリンダー交換/個」で、単価・金額・経過年数・貸主負担・借主負担の欄が並びます。紛失では経過年数を考慮しないので、この欄は使われません。逆に、紛失以外の理由で請求されているのに経過年数が考慮されていない明細が出てきたら、根拠を聞く余地があります。

ガイドラインは借主の原状回復義務として「鍵の返却」も明記しています。退去時は頭書の貸出本数どおりに返すのが前提なので、足りないことは退去日より前に伝えてください。なお標準契約書の第10条第1項は、費用負担義務に違反し催告されても履行しないときは貸主が契約を解除できるとしています。金額に納得がいかないときも、黙って払わずに、内訳の説明を求める形で連絡を続けるほうが安全です。

よくある質問

Q. 警察に遺失届は出したほうがいいですか。

A. 出しておくことをおすすめします。警察庁の案内では、遺失届は「遺失したと思われる場所又は居住している場所の都道府県警察」に出すものとされ、警視庁は「届出はどこの警察署、交番等でも構いません」としています。多くの都道府県はオンライン受付もしていますが、警察庁は「受理するまでに時間を要する場合があります。お急ぎの場合は、最寄りの警察署又は交番等に直接届出を行ってください」と注意しています。

Q. 鍵交換費用の相場はいくらですか。

A. ガイドラインは鍵の単価を金額で示していません。別表3の「原状回復工事施工目安単価」に「玄関ドアの鍵 個」の行はありますが、数字は契約のときに当事者が記入する空欄です。参考になるのは裁判例に出てきた実額で、平成21年の事例では入居時の鍵交換費用が1万2600円、平成22年の事例では退去時の鍵本体の交換費用が2万1000円(税込)でした。鍵の種類で大きく変わるので、見積で確認してください。

Q. 入居時にも鍵交換費用を払いました。退去時にも請求されるのは二重取りでは。

A. それぞれの費用が何に対するものかで決まります。入居時の鍵交換費用は前の入居者の鍵で入られないようにするためのもので、退去時にあなたの紛失を理由に請求されるものは、なくした鍵に対応する交換費用です。名目が同じでも対象が違います。ただし紛失していないのに退去時の鍵交換費用を請求されている場合は、区分Aにあたり貸主負担が妥当とされる場面なので、特約の有無と内容を確認する価値があります。

Q. オートロックで締め出されただけで、鍵はなくしていません。同じですか。

A. 連絡の順番は同じですが、費用の結論は変わります。「鍵の紛失または破損による取替え」にはあたらず、シリンダーの交換も基本的に不要。必要なのは解錠の作業費だけで、火災保険の応急対応サービスが効きやすい場面です。

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参考情報・出典

この記事は一般的な情報の整理であり、個別の契約や事案についての法的助言ではありません。実際の費用負担はご自身の賃貸借契約書の内容によって変わります。判断に迷う場合は、契約書を用意したうえで、お住まいの自治体の消費生活センター(消費者ホットライン188)などにご相談ください。

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