〜暮らしの落書き帳〜

分電盤の点検商法、相談が1年で約5倍の6,545件に|法定点検と見分ける4つの点と、契約後8日間の対処

ブレーカーが並んだ分電盤の内部。色分けされた配線が下へ伸びている

国民生活センターは2026年9月16日、「分電盤の点検商法」に関する相談が急増しているとして、あらためて注意を呼びかけました。全国の消費生活センターに寄せられた相談は、2024年度の1,290件から2025年度は6,545件へと約5倍に増えています。

分電盤は、玄関や洗面所の上のほうに付いている、ブレーカーが並んだあの箱です。ふだん意識することはほとんどありませんが、「電力会社のものですが、分電盤の点検に伺います」という電話がかかってきたとき、それが法定点検の連絡なのか、それとも交換工事を売り込むための電話なのかを、その場で見分けられる人は多くありません。

この記事では、発表された相談の中身を確認したうえで、本物の法定点検と見分けるための具体的な確認点、そして契約してしまった場合に取れる手段を整理します。

相談は2年で39件から6,545件へ、地域も広がった

国民生活センターが公表した、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された年度別の相談件数は次のとおりです。いずれも2026年7月31日までの登録分で、消費生活センター等からの経由相談は含みません。

年度相談件数
2022年度14件
2023年度39件
2024年度1,290件
2025年度6,545件
2026年度(7月31日まで)2,223件

2023年度の39件から2025年度の6,545件へ、2年でおよそ170倍に増えた計算になります。2026年度も7月31日時点で2,223件で、同じ時期で比べた2025年度の1,312件を上回っています。

同センターは2025年1月15日にも同じ手口への注意喚起を出しており、そのときは2024年11月末時点で前年度同期の約25倍という説明でした。今回は、それに続く2度目の注意喚起にあたります。

相談が寄せられる地域にも変化がありました。2024年度は南関東(埼玉・千葉・東京・神奈川)で目立っていた相談が、2025年度は南関東だけでなく北関東(茨城・栃木・群馬)や九州北部(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分)を含む各地で急増しており、地域的な広がりがみられるとしています。

契約当事者の年代は、2025年度の相談(年代が判明している6,039件)のうち80歳代が2,609件(43.2%)で最も多く、70歳代が1,722件(28.5%)、90歳以上が571件(9.5%)と続きます。70歳以上が8割を超えており、同センターは高齢者に特に注意してほしいトラブルだとしています。

金額の面では、契約購入金額が判明している3,250件のうち、15万円以上20万円未満が1,515件(46.6%)で最も多く、平均は約18万円でした。20万円以上も659件(20.3%)あります。

「電力会社のものですが」から契約までの流れ

公表資料に載っている相談事例を見ると、電話から契約までの流れには共通点があります。

ある事例では、「電力会社のものですが分電盤の点検に伺います」という電話がかかってきて、法定点検だろうと思って来訪を承諾したところ、点検後に「分電盤の耐用年数は法律で15年と決まっている。漏電したら大変なことになる」と交換を勧められ、その場で約14万円の交換工事を契約したという相談が寄せられています(2025年9月受付・70歳代女性)。業者が帰ったあとで家族に相談し、契約先の電力会社に確認したところ、関係のない業者だと分かったという内容です。

ほかにも、大手電力会社を名乗る業者が「無料点検に来た」と突然訪問し、「古いので交換が必要」と言われて約20万円で契約したものの、1か月前に受けた法定点検では異常なしと言われていた、という相談(2025年12月受付・80歳代男性)や、「市役所から依頼されてブレーカーの点検に行く」という電話のあとに約12万円で契約した、という相談(2026年2月受付・70歳代女性)が紹介されています。独居の高齢の父が約20万円を現金で支払ったが、見積書や契約書面を受け取っていない、という相談(2026年5月受付・90歳代男性)もありました。

共通しているのは、①電話や突然の訪問で点検を持ちかける、②実在する電力会社や自治体の名前を出して信用させる、③点検後に「漏電する」「火事になる」と不安をあおる、④その場で契約させる、という4つの段階です。なお、国民生活センターの公表資料では個別の業者名は特定されていません。

本物の法定点検は、この4点で見分けられる

ここが実際に役に立つ部分です。一般家庭の電気設備の法定点検には、はっきりしたルールがあります。

電気事業法(第57条、第57条の2)に基づき、一般送配電事業者(いわゆる送配電会社)は4年に1回以上の頻度でお客さま宅を訪問し、電気設備が漏電していないかを調査しています。点検は国の登録を受けた調査機関に委託されており、一部の地域では一般送配電事業者の社員が訪問します。

一般社団法人送配電網協議会と経済産業省が公表している注意事項をまとめると、本物の法定点検には次の4つの特徴があります。

  1. 点検日時を電話で知らせることはない。 点検日時は事前に書面で案内される
  2. 点検作業員は必ず身分証を携帯している。 所属と点検の目的・根拠を示してもらえる
  3. 点検の費用を請求されることはない。 法定点検は無料
  4. 訪問した点検作業員が、その場で設備交換等の契約を持ちかけることはない

つまり、「電話で点検の日時を告げてきた」時点で、それは法定点検の連絡ではないということになります。そして「点検後にその場で交換工事を勧められた」なら、相手が本物の調査員である可能性は、この4点に照らすとかなり低いことになります。

なお、6,000V以上の電圧で電気を受けている需要家は、この4年に1回の調査の対象ではありません。一般的な戸建てやマンションの住戸は対象に含まれます。

本物の法定点検と、点検商法の相談事例にみられる流れを、点検日時の知らせ方・訪問した人の身分・費用・点検のあとの4項目で比べた表
経済産業省・一般社団法人送配電網協議会・国民生活センターの公表資料をもとに作成

「分電盤の耐用年数は法律で15年」は成り立たない説明

相談事例に繰り返し出てくるのが、「分電盤の耐用年数は法律で15年と決まっている」という説明です。この点について、国民生活センターははっきりと「住宅用分電盤の使用期限を定めた法律はありません」と書いています。2025年1月の注意喚起でも、「分電盤は15年で交換することが法律で決められていると言われ契約してしまった」という相談が紹介されており、同じ説明が繰り返し使われていることがうかがえます。

分電盤が経年で劣化し、故障することはあります。ただしそれは「法律で決められた期限が来たから今日交換しなければならない」という話とは別です。交換を検討する場合は、複数の業者から見積もりを取り、機能と価格を十分に確認したうえで契約することを同センターは勧めています。分電盤の交換は電気工事士の資格が必要な工事なので、信用できる業者に依頼することが大切だとしています。

状況を確かめたいだけなら、まずは地域の電気工事店に相談する、という選択肢もあります。見積書のどこを見比べればいいかは、リフォーム見積書の比較方法|追加費用・契約前の確認ポイントが参考になります。

玄関先で契約しないために

対策として同センターが挙げているのは、次の点です。

  • 電話などで点検を持ちかけてくる業者には、安易に点検させない
  • 書面で点検の案内を受けた場合は、相手の所属や点検の目的・根拠を確認し、不安なら管轄の一般送配電事業者などに確認する
  • 点検した業者と、その場で契約しない

確認の電話をかけるときに一つ気をつけたいのは、訪問してきた業者が渡した名刺やチラシに書かれた番号ではなく、自分で調べた電力会社の番号にかけるということです。冒頭で紹介した事例でも、契約している電力会社に自分で確認したことで、関係のない業者だと分かっています。契約している電力会社が分からないという場合は、検針票で契約先を確認する方法を電気代の見直し手順|契約アンペア・料金プラン・電力会社の切り替えで下げる方法で説明しています。

また、災害を口実に不安をあおって点検を持ちかける例もあるため、注意が必要だとされています。

契約してしまったら、書面を受け取った日から8日間

すでに契約してしまった場合でも、打つ手はあります。

点検のために訪問した業者と契約した場合、特定商取引法上の訪問販売に該当すれば、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録(メールなど)でクーリング・オフができます。事前に電話でアポイントを取ってから訪問する場合も、訪問販売に該当すると考えられています。

クーリング・オフをすると、消費者は損害賠償や違約金を支払う必要がなく、すでに支払った代金は速やかに返してもらえます。通知は、後のトラブルを避けるために、書面なら特定記録郵便・書留・内容証明郵便などで行うことが勧められています。メールで送る場合は送信したメールを保存し、事業者のクーリング・オフ専用フォームを使う場合は画面のスクリーンショットを残しておくと、証拠になります。

工事が終わっていても、元に戻してもらえる

分電盤の交換は工事なので、「もう取り付けてしまったから無理だろう」と考えてしまいがちです。しかし消費者庁の特定商取引法ガイドは、クーリング・オフをした場合、土地または建物その他の工作物の現状が変更されているときは、無償で元に戻してもらうことができるとしています。役務(サービス)がすでに提供されている場合でも、その対価を支払う必要はありません。

工事が済んでいることは、8日以内であれば、あきらめる理由にはならないということです。

8日を過ぎていても、解約できることがある

期間を過ぎていても、勧誘方法に問題があれば解約できる場合があります。

事業者がクーリング・オフに関する事項について事実と違うことを告げたり、威迫したりしたために、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、8日を過ぎていてもクーリング・オフができるとされています。

また、契約の大切な部分について事実と違うことを告げられ、それを事実だと誤認して契約した場合には、誤認していたことに気づいたときから1年間、または契約締結時から5年間は、契約の意思表示を取り消せるとされています。「耐用年数は法律で15年と決まっている」という説明は、ここに関わってくる可能性があります。

なお、訪問販売では、事業者は契約の申込みを受けたとき、または契約を締結したときに、商品の種類・販売価格・支払時期・クーリング・オフに関する事項などを記載した書面を渡さなければならないと定められています。クーリング・オフの事項は赤枠の中に赤字で記載する必要があります。「契約書面を受け取っていない」という状況そのものが、確認すべき点だということです。

訪問販売の契約後に取れる手段を、書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフ、8日を過ぎてもできる場合、気づいてから1年または契約から5年以内の契約の取消しの3つに分けて示した図
消費者庁「特定商取引法ガイド」および国民生活センターの公表資料をもとに作成

迷ったら188、相談は家族からでもできる

不安な点や分からない点があれば、早めに消費生活センター等に相談することが勧められています。全国共通の3桁の電話番号である消費者ホットライン「188(いやや!)」にかけると、住んでいる地域の消費生活センター等を案内してもらえます。

見落とされがちですが、消費生活センター等への相談は、本人でなくても可能です。国民生活センターは、家族やホームヘルパー、地域包括支援センターの職員からの相談もできるとしています。離れて暮らす高齢の家族が契約してしまったかもしれない、という段階でも相談できるということです。

相談の前に、契約書面・見積書・支払いの記録・業者とのやり取りを時系列でそろえておくと話が早く進みます。何をどう整理するかは通販トラブルで消費生活センターへ相談する前に準備するもの|記録の整理方法にまとめてあります。通販を例にした記事ですが、整理のしかたは訪問販売の場合も同じです。

実際、相談の8割以上は70歳以上の人の契約です。帰省したときに玄関の分電盤のあたりに見慣れないシールや点検票が貼られていないか、身に覚えのない工事の書類がないかを確認しておくだけでも、気づくきっかけになります。

契約から8日という期限がある以上、「おかしいかもしれない」と思った時点で動くかどうかが、結果を左右します。

今回の発表で、国はどう動くか

国民生活センターは今回、経済産業省と一般社団法人送配電網協議会に対して、分電盤を含む電気設備の法定点検に関する正確な情報提供と、点検商法についての消費者への啓発を求める要望を出しました。消費者が安心して点検を受けられる環境の整備に向けて、関係機関との連携を一層進めてほしいという内容です。あわせて、消費者庁、内閣府消費者委員会、警察庁、電気事業連合会、電気保安協会全国連絡会にも情報提供が行われています。

法定点検そのものは、電気を安全に使うために必要な調査です。同センターも、分電盤は経年劣化により故障する可能性があるので、まずは法定点検について知り、案内が来たときには点検を受けるようにしてほしい、としています。本物の点検まで断ってしまうと、それはそれで安全上のリスクになります。書面で案内が来た法定点検は受ける、電話で持ちかけられた点検は断る。この線引きが、今のところ最も分かりやすい基準です。

よくある疑問

「訪問販売お断り」のステッカーを貼れば、点検の勧誘は止められますか

特定商取引法の再勧誘禁止(法第3条の2)でいう「契約を締結しない旨の意思」の表示には当たらない、というのが消費者庁の見解です。2009年12月10日の同庁取引・物価対策課の資料は、「訪問販売お断り」と記載された張り紙・シール等について「意思表示の対象や内容、表示の主体や表示時期等が必ずしも明瞭でないため、特定商取引法においては、『契約を締結しない旨の意思』の表示には当たらない」としています。法律上の再勧誘禁止を働かせるには、勧誘に対して「いりません」「お断りします」と伝える必要があります。

ただし、貼っても無意味ということではありません。同じ資料は、こうした張り紙・シール等を無視して勧誘する行為を不当な取引として指導・勧告・公表の対象とする条例があることに触れ、そうした取組は特定商取引法の解釈によって影響を受けるものではなく「特定商取引法と相互に補完し合うもの」で、事業者は商道徳としてその意思を尊重する必要があるとしています。実際、大阪市は消費者保護条例にもとづく告示の解説で、「契約を締結する意思がない旨の表示」に「住居等へはり紙若しくははり札をする方法」を含めています。お住まいの自治体の消費者保護条例を確認してみてください。

契約書面を受け取っていません。8日間はいつから数えるのですか

国民生活センターは「クーリング・オフ期間は、申込書面または契約書面のいずれか早いほうを受け取った日から起算します」としています。起算日は、契約した日でも工事をした日でもなく、法律で決められた書面を受け取った日です。書面を一度も受け取っていないのであれば、8日間はまだ始まっていないことになります。同センターは「書面の記載内容に不備があるときは、所定の期間を過ぎていてもクーリング・オフできる場合があります」とも書いています。

訪問販売の書面には、商品の種類、販売価格、代金の支払時期と方法、クーリング・オフに関する事項、事業者の氏名・住所・電話番号などの記載が義務づけられており(特定商取引法第4条・第5条)、クーリング・オフの事項は赤枠の中に赤字で書かれていなければなりません。「8日を過ぎたからもう無理」と自分で判断せず、書面があるかないか、あるなら赤枠・赤字の記載があるかを手元で確かめたうえで、188へ相談してください。

まとめ

  • 分電盤の点検商法に関する相談は、2024年度の1,290件から2025年度は6,545件へと約5倍に増えた(国民生活センター、2026年9月16日公表)
  • 相談の8割超が70歳以上の契約で、契約金額は15万円以上20万円未満が最多、平均は約18万円
  • 本物の法定点検は、①日時を電話で知らせない、②作業員は身分証を携帯、③無料、④その場で契約を持ちかけない、の4点で見分けられる
  • 「分電盤の耐用年数は法律で15年」という説明は成り立たない。住宅用分電盤の使用期限を定めた法律はない
  • 契約してしまっても、書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフができ、工事で現状が変わっていても無償で元に戻してもらえる
  • 勧誘方法に問題があれば8日を過ぎても解約できる場合がある。迷ったら消費者ホットライン「188」へ。相談は家族からでもできる

参考情報・出典

⚡ いま読まれているトレンド

→ トレンド記事をもっと見る
タイトルとURLをコピーしました