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SNSのなりすまし広告、7府省庁が5社に対策強化を要請|消費者庁は9月3日に注意喚起動画を公開

スマートフォンの明るい画面に指を伸ばす手元

この記事は公開時点の情報です(2026年9月27日追記)
8月7日の要請からおよそ7週間が経ちましたが、内閣官房「なりすまし広告詐欺等対策関係府省庁会議」のページに公表されているのは、2026年8月7日の第1回本会議と9月2日の第1回実務者会合までです。2026年9月27日時点で、5社への追加要請や処分の公表は確認できません。次の節目は本文のとおり、事業者が具体的な実施内容をデジタル庁へ文書で報告する2026年10月16日です。

消費者庁は2026年9月3日、「なりすまし広告詐欺等に関する注意喚起動画」を公開しました。掲載先は、同庁が以前から運用している「SNSなどを通じた投資や副業といった『もうけ話』にご注意ください!」という注意喚起ページです。

その約1か月前の8月7日には、消費者庁・警察庁・金融庁・デジタル庁・総務省・法務省・経済産業省の7府省庁が合同で、SNSなどを提供する大規模事業者5社に対し、なりすまし詐欺広告への対策強化を文書で要請しています。要請文はPDFで全文が公開されており、事業者に求めた内容と、その報告期限まで具体的に書かれています。

この記事では、7府省庁が何を求めたのかを要請文に沿って整理し、警察庁と消費者庁が公表している被害の数字を確認したうえで、広告を見かけた側が振り込む前に自分で確認できることを整理します。特定のSNSやサービスの安全性を評価するものではありません。

何が起きたのか:7府省庁が5社に文書で要請

要請が行われたのは2026年(令和8年)8月7日です。要請文は消費者庁のサイトに「SNS等におけるなりすまし詐欺広告に関する対策強化のための7府省庁合同要請の実施について」というPDFで掲載されています。

要請の名義に並んでいるのは、警察庁刑事局長、金融庁の銀行・証券監督局長と資産運用・保険監督局長、消費者庁次長、デジタル庁国民向けサービスグループ統括官、総務省大臣官房総括審議官(情報通信担当)、法務省民事局長、経済産業省商務情報政策局長です。取りまとめの担当はデジタル庁の戦略・組織グループ統括官と記されています。

宛先は5社です。要請文はそれぞれの社ごとに同じ内容で作成されています。

宛先要請文に記載された名義
Google LLC日本における代表者 グーグル・テクノロジー・ジャパン株式会社
LINEヤフー株式会社代表取締役社長 CEO
Meta Platforms, Inc.CEO
TikTok Japanゼネラルマネージャー
X Corp.プレジデント、セクレタリーおよびトレジャラー

要請文が対象としている「なりすまし詐欺広告」は、SNSその他の交流型プラットフォームにおいて、ディープフェイクを用いて著名人の肖像や音声を無断で利用したなりすまし広告を含む詐欺広告、と定義されています。要請文はその影響について、広告を見た消費者に財産上の被害をもたらすおそれがあるだけでなく、なりすまされた本人の社会的信頼を著しく損なうおそれもある、という二つの側面を挙げています。

求められた対策は3つ

要請文の「記」以下に並んでいるのは、次の3項目です。

1つ目は、広告主への本人確認の確実な実施です。 広告主を特定・追跡できるようにすることでなりすまし詐欺広告の流通を抑える、という狙いが書かれています。要請文は「電子的な認証手段の活用を含む」本人確認を求めており、注記で、個人については確実な本人確認の手段の一つとしてマイナンバーカードがあること、法人については商業登記電子証明書があることを挙げています。

2つ目は、広告の透明性向上に係る措置です。 広告主や広告の信頼性を、消費者や利用者が自分で確認できるようにする、という位置付けです。要請文が例示している表示項目は具体的で、広告主に関する情報としては名称・所在地・身元確認の有無、広告に関する情報としては広告である旨、主に生成AI技術を用いて作成された広告である旨、広告表示理由が挙げられています。

3つ目は、削除要請への対応の徹底です。 法令に違反するおそれがあるなりすまし詐欺広告について、インターネット・ホットラインセンターなどの既存の窓口や法令所管省庁から削除要請を受けた際には、遅滞なく判断を行い、迅速かつ適切に削除等の対応を行うこと、とされています。

3項目とも、実施を求めるだけでなく報告を求めている点が特徴です。報告の期限は次のように定められています。

内容期限
具体的な実施内容をデジタル庁へ文書で報告2026年10月16日まで
報告した取組を実施する期間2026年10月1日〜2027年2月28日
その期間の取組結果をデジタル庁へ文書で報告2027年3月16日まで

報告項目もかなり細かく指定されています。たとえば削除については、削除件数を理由別(刑法違反、金融商品取引法違反、その他)と契機別(既存の窓口や省庁からの削除要請、自主的な削除、一般利用者からの通報など)に分けて報告することに加えて、削除要請については要請主体ごとに、要請件数に対する削除件数の割合、平均対応所要時間、未削除件数の理由別内訳まで求められています。

「行政指導」であって処分ではない

読み違えやすいところなので、要請文の注記をそのまま押さえておきます。要請文には、本要請は行政手続法第2条第6号に規定する行政指導に該当するものであり、処分(同条第2号)に該当するものではない、と明記されています。5社が要請どおりに対応しなかったからといって、この文書そのものによって直ちに罰則や不利益処分が科されるという性質のものではなく、要請文自身も「更なる自主的取組の強化」という言い方をしています。

一方で、要請文は関連する法令についても具体的に触れています。著名人の名義を無断で使用して虚偽の投資実績を紹介する内容を表示するなどした場合、刑法第161条第1項(偽造私電磁的記録文書等行使の罪)等に違反し得るとしたうえで、その旨を明記するかたちで、インターネット・ホットラインセンターの「ホットライン運用ガイドライン」が2026年8月7日に、総務省の情報流通プラットフォーム対処法第26条に関するガイドラインが8月6日に、それぞれ改定されたことが記されています。要請とガイドライン改定が、ほぼ同時に動いていたことになります。

また、無登録業者が、一見してそれ自体では金融商品取引業に該当しないかのような広告を入口として、誘導した先のウェブサイトやSNSで金融商品取引業に該当する行為を行う場合、一連の行為は金融商品取引法第29条等に違反し得る、とも書かれています。

なぜいま要請なのか:被害額の伸び方

背景にある数字を、公的機関の発表で確認します。

警察庁が2026年7月30日に公表した「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」によると、2026年上半期のSNS型投資詐欺の認知件数は5,893件で、前年同期から3,020件(105.1%)増えました。被害額は797.9億円で、前年同期から444.9億円(126.0%)の増加です。件数も被害額も、半年で倍以上になっています。

同じ資料では、特殊詐欺全体の被害額は1,816.2億円とされており、SNS型投資詐欺はその43.9%を占めています。既遂1件当たりの被害額はSNS型投資詐欺が1,362.5万円で、警察庁はこれを、特殊詐欺全体の1件当たり被害額を押し上げている主たる要因の一つとして挙げています。

令和8年上半期(暫定値)認知件数被害額
特殊詐欺全体22,031件(+18.3%)1,816.2億円(+51.7%)
うちSNS型投資詐欺5,893件(+105.1%)797.9億円(+126.0%)

なお警察庁は、令和8年からSNS型投資・ロマンス詐欺を特殊詐欺の一手口として位置付ける整理に変更しています。過去の資料と比べるときは、この呼称の整理が変わっている点に注意が必要です。

入口になっていた広告の掲載先

今回の要請文が5社を宛先にした理由も、要請文の注記に書かれています。警察庁の「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」で、SNS型投資詐欺の当初接触手段のうち、バナー等広告の接触ツールとして割合が大きかったものとして、次の数字が挙げられています。

接触ツール割合
YouTube27.1%
Instagram16.3%
TikTok10.4%
Facebook6.5%
LINE4.8%
X2.1%

この6サービスを提供する事業者が、そのまま要請の宛先5社に対応しています。

消費生活相談の側から見た数字

消費者庁は、注意喚起ページで別の角度の数字も公開しています。全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)に登録された相談のうち、「SNSをきっかけとして、著名人を名乗る、つながりがあるなどと勧誘される金融商品・サービスの消費者トラブル」を集計したものです。集計対象には、著名人本人だけでなく、そのアシスタント、弟子、親族などの関係者を名乗る相談も含まれると注記されています。

2026年7月31日までの登録分をもとにしたグラフでは、年度別の相談件数と平均契約購入金額が次のように示されています。

年度相談件数平均契約購入金額
令和3年度52件436万円
令和4年度170件234万円
令和5年度1,661件678万円
令和6年度976件571万円
令和7年度1,322件641万円
令和8年度177件609万円

令和8年度の177件は、4月から7月31日の登録分までを含む途中の数字である点に注意してください。年度単位で比べられるのは令和7年度までです。

ここで目を引くのは件数よりも金額のほうです。令和5年度以降、平均契約購入金額は600万円前後で高止まりしています。月次のグラフでは、令和6年3月の316件が最多と示されており、直近の令和8年4月は55件と注記されています。件数のピークは過ぎているように見えますが、1件あたりの金額は下がっていません。

9月1日には国民生活センターも公表している

消費者庁の注意喚起ページは、関連サイトとして国民生活センターが2026年9月1日に公表した「SNSで著名人が勧める“もうかる方法” それって本当!? 金融商品・サービスのトラブルにご注意!」を挙げています。7府省庁の要請が事業者側に向けたものであるのに対し、こちらは消費者側に向けた注意喚起です。

同センターが紹介している相談事例には、次のようなものがあります。

  • 著名人のアシスタントを名乗る人物の投資講座に参加し、アシスタント名義の口座へ総額1,000万円ほどを振り込んだ。出金を希望したところ約1,100万円の手数料を請求された(2025年8月受付・50歳代男性)
  • 動画サイトの広告からメッセージアプリのグループに入り、指定された海外の暗号資産取引サイトで合計約1,000万円分を購入。残高が約2,000万円になり出金しようとしたところ、税金等で500万円の入金が必要だと言われた(2025年8月受付・50歳代女性)
  • SNSの広告から投資グループに加入し、個人名義の口座へ送金。いったんは約30万円を出金できたため信用し、その後約400万円を送金したところ連絡が取れなくなった(2026年2月受付・60歳代男性)

3件に共通しているのは、広告そのものではなく、そこから誘導された先で被害が発生している点です。2件目と3件目には、「少額で試したらもうけが出た」あるいは「一度は出金できた」という段階が挟まっています。

広告を見かけたときに、自分で確認できること

自宅のソファでスマートフォンの画面を見る人

ここからは、公的機関が公開している情報にもとづいて、確認できることを整理します。

振込先が個人名義の口座なら、その時点で詐欺です。 国民生活センターは「通常の株やFX等の取引で個人名義の銀行口座に振り込みさせることはありません。指定された口座が個人名義の場合は詐欺です。絶対に振り込まないでください」と明言しています。消費者庁の注意喚起ページも同じ趣旨を記載しています。判断に迷う要素が多いなかで、これはもっとも機械的に使える線引きです。

名前が使われている著名人の公式サイトや公式アカウントを確認します。 国民生活センターは、SNS上には消費者を信用させるために著名人の画像等を無断で掲載しているものがあるとして、著名人の公式サイトや公式アカウントで投資に関する注意喚起が出ていないかをまず確認するよう促しています。冒頭の相談事例でも、勤務先とされた金融商品取引業者の公式サイトに「SNSを通じて顧客にメッセージを送り、グループ・チャットへの登録を促すことはありません」という注意喚起が掲載されていた、という経緯が記されています。

業者が登録を受けているかどうかを金融庁のリストで確認します。 日本の居住者を相手に株取引・FX取引・暗号資産取引などを行う者は、金融商品取引法または資金決済法にもとづく登録が必要です。国民生活センターは、金融庁が公開している登録業者の一覧に加えて、無登録で金融商品取引業を行っているとして警告書を発出した者の名称等の掲載も、あわせて確認するよう案内しています。

「AIで作られた映像かどうか」を自分の目で見分ける前提に立たないことです。 今回の要請文が対象としているのは、ディープフェイクを用いて著名人の肖像や音声を無断で利用した広告です。要請文が事業者側に「主に生成AI技術を用いて作成された広告である旨」の表示を求めているのは、裏を返せば、表示がなければ利用者側で判別することが難しいという前提があるからだと読めます。映像や音声の自然さではなく、振込先の名義や登録の有無といった、確認できる事実のほうで判断するのが現実的です。

なお、要請された広告主情報や生成AI利用の表示が実際にいつから、どのサービスでどのように表示されるようになるのかは、現時点では公表されていません。要請文で決まっているのは、事業者が実施内容を2026年10月16日までにデジタル庁へ報告し、2026年10月1日から2027年2月28日までの取組結果を2027年3月16日までに報告する、という手続きの日程です。表示が増えることを待つのではなく、上に挙げた確認のほうを先に使うことになります。

不審に思ったとき、被害に遭ったときの相談先

電話をかけながら困った表情を浮かべる高齢の女性

消費者庁と国民生活センターが案内している窓口は共通しています。

窓口番号内容
消費者ホットライン188(いやや!)最寄りの市区町村・都道府県の消費生活センター等を案内する全国共通の3桁番号
警察相談専用電話#9110最寄りの警察の相談窓口につながる全国共通の番号

両機関とも、いったん振り込んでしまうと被害回復には困難が伴うこと、相手の説明に不信感や疑問を抱いた時点ですぐ相談することを繰り返し記載しています。あわせて、被害回復をうたった二次被害にあう可能性があるため、その場合も不審に思ったら消費生活センター等に相談するよう促しています。

まとめ

  • 2026年8月7日、7府省庁がGoogle・LINEヤフー・Meta・TikTok Japan・X Corp.の5社に、なりすまし詐欺広告への対策強化を文書で要請した
  • 求められたのは、広告主への本人確認、広告の透明性向上(広告主の名称・所在地・身元確認の有無、生成AI利用の有無などの表示)、削除要請への対応の徹底の3点
  • 要請は行政指導であり処分ではないが、実施内容を2026年10月16日までに、2026年10月1日〜2027年2月28日の取組結果を2027年3月16日までにデジタル庁へ報告することが求められている
  • 背景として、2026年上半期のSNS型投資詐欺は認知5,893件・被害額797.9億円で、いずれも前年同期の2倍を超えた(警察庁・暫定値)
  • 消費者庁は9月3日に「なりすまし広告詐欺等に関する注意喚起動画」を公開し、9月1日には国民生活センターが同種のトラブルについて相談事例を公表している
  • 利用者側で確実に使える線引きは、振込先が個人名義なら詐欺であること、著名人の公式サイト・公式アカウントの注意喚起を確認すること、金融庁の登録業者一覧と無登録業者の警告リストを確認すること

参考情報・出典

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