〜暮らしの落書き帳〜

パート・有期雇用のルールが10月1日に変わる|待遇差の説明を求める権利が雇入れ時の明示事項に

エプロン姿のスタッフがカウンター越しに相手と話している様子

厚生労働省は2026年8月3日付のWebマガジンのコラムで、2026年10月からパートタイム・有期雇用労働者の待遇に関するルールが変わることを告知しました。同省の「同一労働同一賃金特集ページ」には、関連する施行規則と告示について「<令和8年10月1日施行・適用>」と明記されています。改正後の省令・指針が公布されたのは2026年4月28日で、施行日まで残りおよそ3週間という段階です。

変わるのは3つです。雇い入れたときに会社が書面で示す事項が1つ増えること、「同一労働同一賃金ガイドライン」の中身が見直されること、そして待遇差を説明するときのやり方が絞られることです。このうち働く側にとって一番わかりやすいのは1つ目で、10月以降に受け取る労働条件通知書には「正社員との待遇の違いについて、その内容と理由の説明を求めることができる」という趣旨が書かれることになります。

この記事では、3つの改正が具体的に何を指しているのかを厚生労働省の資料に沿って整理したうえで、実際に説明を求めるときにどんな順序で進むのか、会社が応じない場合にどこへ相談できるのかを見ていきます。あわせて、10月に動く別の制度と混同しやすい点にも触れます。特定の会社や働き方を評価するものではありません。

何が変わるのか:3つの改正を1枚で

厚生労働省の特集ページでは、主な改正事項が次の3つとして示されています。

#改正事項形式施行・適用
①雇い入れ時の労働条件明示事項の追加省令(令和8年厚生労働省令第87号)2026年10月1日
②同一労働同一賃金ガイドラインの改正告示(令和8年厚生労働省告示第203号)2026年10月1日
③雇用管理の改善等に関する措置内容の改正告示(令和8年厚生労働省告示第202号)2026年10月1日

法律そのもの(パートタイム・有期雇用労働法)の条文が書き換わるわけではなく、その下にある省令と、厚生労働大臣が定める指針・ガイドラインが変わる、というのが今回の形です。特集ページの「改正の経緯」欄には、同一労働同一賃金の施行から5年が経過したことを踏まえて2025年2月から審議会の部会で議論が行われ、2025年12月の部会報告を経て、2026年3月に労働政策審議会への諮問・答申、4月28日に公布という流れが記されています。

白紙の書類を1枚手に取る手元

ポイント①:明示される事項が4つから5つになる

現在、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れたときに、会社が書面の交付などで明示しなければならない事項は4つです。厚生労働省のコラムはこれを「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」と挙げています。10月からは、ここに1つ加わります。

現行(4つ)10月1日から追加
昇給の有無「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨
退職手当の有無
賞与の有無
相談窓口

コラムはこの追加の狙いを、「パートタイム・有期雇用労働者に対して正社員との待遇の違いについて会社に説明を求めることができる旨を明示し、疑問が生じた際に相談を促すことを目的としています」と説明しています。

ここで見落としやすいのが、コラムに付いている注記です。明示の対象となる「雇い入れたとき」について、「※1:労働契約の更新時も含みます。」と書かれています。つまり、すでにその会社で働いている有期雇用の人も、10月以降に契約を更新するタイミングで、この一文が入った書面を受け取ることになります。新しく入る人だけの話ではありません。

「説明を求める権利」自体は今もある

もう一点、正確に押さえておきたいことがあります。10月に新しく生まれるのは「明示する義務」であって、「説明を求める権利」そのものではありません。パートタイム・有期雇用労働法第14条第2項には、すでに次のように定められています。

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

この規定は、パートタイム・有期雇用労働法が施行された2020年4月(中小企業への適用は2021年4月)から置かれているものです。したがって、10月を待たずに今の時点でも会社に説明を求めることはできます。今回の改正は、その権利を「知らないまま働いている人がいる」という状態を、書面での明示によって減らそうとするものだと読めます。

ポイント②:家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の考え方が明確化

2つ目は「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正です。このガイドラインは、正社員と非正規雇用労働者の間にどのような待遇差があれば不合理と認められるのかについて、原則となる考え方と具体例を示したものです。

コラムによれば、今回の改正では裁判例などを踏まえて、賞与、退職手当、各種手当、福利厚生についての記載が見直されました。そのうえで例として3つが挙げられています。

待遇コラムに示された改正後の考え方
家族手当相応に継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者に対し、正社員と同一の手当を支給しなければならない
住宅手当正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるパートタイム・有期雇用労働者に対し、正社員と同一の手当を支給しなければならない
夏季冬季休暇パートタイム・有期雇用労働者に対し、正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない

注意したいのは、家族手当と住宅手当には条件が付いている点です。家族手当は「相応に継続的な勤務が見込まれる」場合、住宅手当は「正社員と同一の転居を伴う配置の変更がある」場合という前提が置かれています。すべてのパート・有期雇用労働者に無条件で同額が支給される、という内容ではありません。自分がこの前提に当てはまるかどうかは、勤続の見込みや転勤の有無といった個別の事情によって変わります。

なお、告示の本文と「同一労働同一賃金ガイドライン 新旧対照表(解説付き)」は特集ページからPDFで公開されていますが、本記事の作成時点でPDF本文の内容までは確認できていません。上記の3項目は、いずれも厚生労働省コラムの記述にもとづくものです。手当の具体的な線引きを判断する必要がある場合は、新旧対照表そのものを確認してください。

ポイント③:説明のやり方が2つのどちらかに絞られる

3つ目は、企業に求められる雇用管理上の措置の見直しです。コラムは、待遇の相違等について説明する際の方法として、「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかによることが必要になる、としています。

働く側から見ると、これは「口頭だけで済まされない」という意味を持ちます。口頭で説明する場合でも資料を使うことが前提になり、資料を渡して終わりにする場合はその資料に説明すべき事項がすべて書かれていることが求められる、という整理です。

このほか2点が挙げられています。1つは賃金の決め方で、「職務の内容や成果、意欲、能力、経験をはじめとする要素を公正に評価し、昇給に反映するなど、公正な評価に基づいて決定することが求められます」とされています。もう1つは正社員転換で、転換制度の内容や転換実績などをパートタイム・有期雇用労働者に明示するよう努めることと、それらをウェブサイトで定期的に公表することが望ましいとされました。

後者は「努める」「望ましい」という表現である点に注意が必要です。義務ではないため、転換実績を公表していない会社があっても直ちに違反にはなりません。ただし、応募や契約更新の判断材料として実績を尋ねてみる余地は広がります。

オフィスで向かい合って話す2人の女性

実際に説明を求めるときの流れ

法律の条文にそって整理すると、次のような順序になります。

  1. 求める。説明の請求は、まず会社(社長、店長、人事担当など)に対して行います。法第14条第2項が対象としているのは「待遇の相違の内容及び理由」と、その待遇の決定にあたって考慮した事項です。
  2. 手元の書類をそろえる。労働条件通知書や雇用契約書、就業規則、賃金規程、直近の給与明細があると、どの手当について聞きたいのかを具体的に示せます。厚生労働省も、労働者向けの案内で「気になる手当やボーナスの支払いの違いや有無について事業主(社長や店長など)に『なぜ違い』があるのか聞いてみましょう」と呼びかけています。
  3. 不利益な扱いは禁止されている。法第14条第3項は「事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定めています。説明を求めたこと自体を理由に不利に扱うことは、法律上できません。
  4. 社内の相談体制を使う。法第16条は、事業主に対し、短時間・有期雇用労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備を義務づけています。雇入れ時に明示される4つの事項のうち「相談窓口」は、これに対応するものです。

会社が説明してくれないときの相談先

厚生労働省は特集ページの「労働者のみなさまへ」で、事業主に聞いても説明してくれないなどの場合は「国の機関に無料で相談してみましょう」と案内し、相談窓口として都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)の一覧(PDF)を掲げています。

法律上も、行き詰まったときの手段が用意されています。第22条は、会社が苦情の申出を受けたときに自主的な解決を図るよう努めるものと定めています。それでも解決しない場合、第24条により、都道府県労働局長が紛争の当事者に対して必要な助言、指導または勧告をすることができます。第25条では、当事者の申請にもとづき紛争調整委員会による調停を行わせる仕組みが置かれています。いずれについても、援助を求めたことや調停を申請したことを理由とする不利益取扱いは禁止されています。

さらに第18条第2項では、法第12条から第14条までなどの規定に違反している事業主に勧告をしたにもかかわらず従わなかったときは、厚生労働大臣がその旨を公表できるとされています。

なお、特集ページに載っている「働き方改革推進支援センター」や「キャリアアップ助成金」は事業主向けの支援策です。働く側の相談先は、上記の都道府県労働局になります。

10月に動く別の制度と混同しないために

2026年10月は、パート・有期雇用で働く人に関係する制度の変更が重なる時期です。Daily Picksでも、社会保険の適用要件の見直し(いわゆる「106万円の壁」)について別の記事で扱っています。

ただし、この2つは別の話です。今回の改正は正社員との待遇差の説明と手当の考え方に関するもので、社会保険に加入するかどうかの基準を変えるものではありません。「10月から何かが変わるらしい」という情報をまとめて受け取ると混ざりやすいので、自分に関係するのがどちらなのかは分けて考えたほうが確実です。

現時点で確認できていないこと

正確を期すため、本記事で確認できなかった点を挙げておきます。

  • 改正省令(令和8年厚生労働省令第87号)および告示(同第202号・第203号)の本文。特集ページからPDFで公開されていますが、本文の内容は確認していません。
  • 「同一労働同一賃金ガイドライン 新旧対照表(解説付き)」「令和8年改正の概要」「改正省令及び告示の周知に係るQ&A」の各PDFの内容。
  • 中小企業に対する適用時期の扱い。特集ページには「令和8年10月1日施行・適用」とのみ記載されており、企業規模による区分の記載は確認できませんでした。パートタイム・有期雇用労働法自体は2021年4月1日に中小企業にも適用され全面施行となっています。

まとめ

  • 施行日:2026年10月1日。改正省令・告示の公布は2026年4月28日
  • 改正は3つ:雇い入れ時の明示事項の追加(省令)、同一労働同一賃金ガイドラインの改正(告示)、雇用管理上の措置内容の改正(告示)
  • 明示事項:現行の4つ(昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口)に、「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨が加わる
  • 更新時も対象:厚生労働省コラムの注記により、労働契約の更新時も明示の対象に含まれる
  • 権利は今もある:説明を求める権利は法第14条第2項として既に存在。10月に変わるのは会社側の明示義務
  • 手当:家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇の考え方が明確化。ただし家族手当と住宅手当には勤務の継続見込み・転居を伴う配置変更という前提がある
  • 説明の方法:「資料を活用し口頭で説明」か「説明事項をすべて記載した資料の交付等」のいずれかが必要に
  • 正社員転換:制度の内容・実績の明示は努力、ウェブサイトでの定期公表は「望ましい」という位置づけ
  • 不利益取扱いは禁止:説明を求めたこと、労働局に援助を求めたこと、調停を申請したことを理由とする不利益な扱いは法律で禁じられている
  • 相談先:都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)。相談は無料

制度の内容は施行日までに追加の周知資料が出る可能性があります。実際に手続きを進める前には、厚生労働省の特集ページで最新の資料を確認してください。

参考情報・出典

  • 2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント|厚生労働省 Webマガジン — 2026.08.03付コラム。ポイント①として現行の明示4事項(昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口)に「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨が追加されること、「※1:労働契約の更新時も含みます。」との注記。ポイント②として家族手当「相応に継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者に対し、正社員と同一の手当を支給しなければならない」、住宅手当「正社員と同一の転居を伴う配置の変更があるパートタイム・有期雇用労働者に対し、正社員と同一の手当を支給しなければならない」、夏季冬季休暇「正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければならない」。ポイント③として説明方法は「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれか、賃金は「公正な評価に基づいて決定することが求められます」、正社員等への転換制度の内容や転換実績は明示に努め「ウェブサイトで定期的に公表することが望ましい」
  • 同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省 — 「パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善を進めるため、『同一労働同一賃金』に関する施行規則と告示が改正されます。<令和8年10月1日施行・適用>」。主な改正事項は「雇い入れ時の労働条件明示事項の追加(省令)」「同一労働同一賃金ガイドラインの改正(告示)」「雇用管理の改善等に関する措置内容の改正(告示)」。改正の経緯として「改正後の省令・指針は令和8年4月28日に公布され、同年10月1日から施行・適用されます」。トピックス欄に「2026年4月28日 同一労働同一賃金に係る改正省令・告示が公布されました。」「2021年4月1日 パートタイム・有期雇用労働法が中小企業にも適用され、全面施行となりました。」。労働者向けの案内として「気になる手当やボーナスの支払いの違いや有無について事業主(社長や店長など)に『なぜ違い』があるのか聞いてみましょう」「事業主(社長や店長など)に聞いても説明をしてくれないなどあれば国の機関に無料で相談してみましょう」、相談窓口として都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)の一覧PDFを掲載
  • 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)|e-Gov法令検索 — 第6条(労働条件に関する文書の交付等)、第14条第2項(求めがあったときの待遇の相違の内容及び理由等の説明義務)、第14条第3項(説明を求めたことを理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止)、第16条(相談のための体制の整備)、第18条第2項(勧告に従わない場合の公表)、第22条(苦情の自主的解決)、第24条(都道府県労働局長による助言・指導・勧告、および援助を求めたことを理由とする不利益取扱いの禁止)、第25条(紛争調整委員会への調停の委任)。条文はe-Gov法令APIで取得して確認
  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)一覧|厚生労働省 — 同一労働同一賃金特集ページが労働者向けの相談窓口として掲げているPDF。リンク先が存在することは確認しましたが、PDF本文の内容は本記事では確認していません

※本記事は2026年9月8日(JST)時点で確認できた厚生労働省の公表内容および法令にもとづいています。改正省令・告示の本文PDF、ガイドライン新旧対照表、周知Q&Aの各PDFは内容を確認していません。個別の待遇差が不合理にあたるかどうかの判断は、勤務の実態や職務の内容によって異なります。具体的な事案については都道府県労働局の窓口へご相談ください。

⚡ いま読まれているトレンド

→ トレンド記事をもっと見る
タイトルとURLをコピーしました